コラム

TVに映るウクライナ避難民はなぜ白人だけか──戦争の陰にある人種差別

2022年04月19日(火)17時30分

もちろん、ウクライナから多くの人が避難せざるを得なくなった直接的な原因はロシアによる侵攻であり、さらに自国民を救出する航空機などを派遣できない(あるいはしない)中東やアフリカの各国にも原因はある。

しかし、少なくとも先進国が人権や人道の先導者を自認するなら、避難民への差別的な待遇を許すべきではないだろう。

そうでなければ、人権や人道をめぐるダブルスタンダードが際立ち、「ロシアの非人道性」を強調しても説得力が損なわれる。相手を選ばず殺傷することと、相手を選んで助けたり助けなかったりすることを比べれば、程度の差はあれ人道に反する点では同じだからだ。

グローバル化した現代の「新冷戦」は、かつての冷戦時代より情報やイメージの力が大きく、軍事力や経済力だけでその勝者になることは難しい。しばしば「冷戦型」ともいわれるウクライナ戦争だが、その意味では現代的な戦争でもあるのだ。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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