コラム

大卒内定率「過去最高77%」に潜むミスマッチ 見逃せない「53.1%」

2018年12月04日(火)12時00分

筆者は、1年生からこの1dayインターンシップにどんどん参加できるようになればいいと考えている。1dayインターンシップでなくても、ネットを活用してもいい。企業の収益構造であるビジネスモデルや、各企業の活動が社会にどんな価値を出しているのか、そしてそれらを支えている多くの仕事の実際を知れる機会を作ってほしいのだ。

いきなり長期のインターンシップは、リスクが高い

物事を決めていくまでには、理想的な流れが必要だ。全体観を持たない人が、点だけを見て、それを深めても、本当に良い選択なのかどうか判断がつかないからだ。

本格的な長期のインターンシップで職業体験をする前に、世の中の仕組みや、企業活動がどのように社会を支えているか、その中の仕事にはどんな種類があって、どのような大変さや面白さがあるのか、多くの情報を知っておくべきだ。その中から興味のある仕事や企業をピックアップして、長期の職業体験をしたほうがいい。

今の大学生の就職活動の最大の問題は、社会やビジネスの実像を知らずに、自己分析をし、企業選択をしようとしていることだ。

そもそも、世の中にどんな仕事があり、どんな企業がどのように社会に役立っているのかを知らなければ、自分の強みや弱みを認識し、どんな職業に向いているかを考えようがない。つまり本当の自己分析は、自分を知るための鏡がないと自分の特徴は見えないものだ。

この当たり前のことを無視して、短期間で就職活動を行うことには無理がある。

大学の1、2年生の前半で社会の仕組みを知る活動をし、2、3年生の中盤で深いところまで体験できるインターンシップを行い、3、4年生の終盤で、自ら選択して意思決定できる。そんな活動が理想である。

学生は社会を知ることで、自分が大学で何を学ばなければならないかを理解するだろう。単位を取るための勉強から、必要性を理解した勉強に変わり、もっと真剣に取り組むようになるかもしれない。

企業はもっと早くから自分たちの社会の中での役割を、それにともなう仕事の醍醐味を伝える努力をするべきだ。その活動が、やがて自社への就職希望者を増やすことにつながる。内定辞退も減り、何より入社後の定着率が上がるはずだ。

もちろん最初のインターンシップで天職に偶然に出合うこともあるかもしれない。しかし、辛いことがあると、本当にこの選択でよかったのか疑問に思い、隣の芝生が青く見えることもあり得る。

未来を固定しての逆算のキャリア教育では意味がない

ここでひとつ、誤解がないように伝えておきたいことがある。それは就きたい職業や入りたい会社を決めて、やるべきことを逆算して特定し、それを粛々と実行することを推奨しているわけではないことだ。

プロフィール

松岡保昌

株式会社モチベーションジャパン代表取締役社長。
人の気持ちや心の動きを重視し、心理面からアプローチする経営コンサルタント。国家資格1級キャリアコンサルティング技能士の資格も持ち、キャリアコンサルタントの育成にも力を入れている。リクルート時代は、「就職ジャーナル」「works」の編集や組織人事コンサルタントとして活躍。ファーストリテイリングでは、執行役員人事総務部長として同社の急成長を人事戦略面から支え、その後、執行役員マーケティング&コミュニケーション部長として広報・宣伝のあり方を見直す。ソフトバンクでは、ブランド戦略室長、福岡ソフトバンクホークスマーケティング代表取締役、福岡ソフトバンクホークス取締役などを担当。AFPBB NEWS編集長としてニュースサイトの立ち上げも行う。現在は独立し、多くの企業の顧問やアドバイザーを務める。

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