コラム

マスク姿で登場したトランプ米大統領とジョンソン英首相 笑うに笑えぬアングロサクソンの凋落

2020年07月13日(月)12時20分
マスク姿で登場したトランプ米大統領とジョンソン英首相 笑うに笑えぬアングロサクソンの凋落

7月11日、今になってやっとマスクを着けて公式の場に出てきたトランプ大統領 Tasos Katopodis-REUTERS

[ロンドン発]ボリス・ジョンソン英首相が10日、初めてマスクを着用してメディアの前に登場したのに続き、ドナルド・トランプ米大統領も11日、初めてマスクを着けて公の場に姿を見せた。米英両国は第二次大戦以降、大西洋をまたぐ「特別関係」を維持してきたが、遅すぎた両首脳のマスク着用に米中逆転の到来を痛感した。

アングロサクソン国家の米英は2つの世界大戦と冷戦を勝ち抜き、19~20世紀を通じて世界を主導してきた。しかし2001年の米中枢同時テロを引き金にアフガニスタンとイラクの2つの戦争に捕らわれ、世界金融危機、イギリスの欧州連合(EU)離脱、トランプ大統領の誕生、新型コロナウイルスで米英の時代は完全に幕を下ろしたのでなかろうか。

ナチスドイツのファシズム、旧ソ連の共産主義という全体主義に対し、米英両国は「自由」の旗を掲げて戦った。表現の自由と民主主義を重んじ、個人の自由や利益を優先させれば最大多数の最大幸福がもたらされるという信念のもと、市場主義、自由貿易、グローバルゼーションを世界中に広めたが、出現したのは阿鼻叫喚の悪夢だった。

新型コロナウイルスによる死者はアメリカが13万7578人、ブラジル7万1548人、イギリス4万4819人(7月12日時点、worldometers)。

ブラジルのジャイール・ボルソナロ大統領は「感染しても大丈夫」とマスク着用規則を公然と無視し続け、6月22日に連邦裁判所の判事から「マスクを着用するか罰金を払うかだ」と命じられた。そして7月7日、陽性が確認されると「遅かれ早かれ国民のかなりの人が感染することをみんな知っている。私も感染した」と開き直った。

トランプ大統領「マスク着用は自分への不支持表明だ」

ジョンソン首相もコロナ対策の行動計画を発表した3月3日の記者会見で「病院で感染者と握手した」と軽口をたたき、いったんは集団免疫の獲得を目指したものの、専門家に「都市封鎖しなければ25万人の死者」という報告書を公表されて180度方針転換。自ら感染して一時、集中治療室(ICU)に運び込まれ、死線をさまよった。

アメリカでは疾病予防管理センター(CDC)が4月3日「手作りの布マスクは自発的な公衆衛生の追加手段として有効」と市民にマスク着用を勧め、20以上の州がマスク着用を義務化。しかしトランプ大統領は「市民がマスクを着用するのは他の人を守るのではなく、自分への不支持を示すためだ」と反発し、マスクを巡って国内が分断する事態に陥った。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com

ニュース速報

ワールド

仏、外出禁止令の対象地域拡大 独は感染拡大国への渡

ワールド

トランプ氏、コロナ検査で陰性 最後の討論会控え=首

ビジネス

米ゴールドマン、1MDB巡る贈賄で制裁金30億ドル

ワールド

OPECプラスの協調減産、現行水準維持も プーチン

MAGAZINE

特集:日本人が知らないワクチン戦争

2020-10・27号(10/20発売)

全世界が先を争う新型コロナのワクチン確保 ── その最前線と日本の開発が遅れた本当の理由

人気ランキング

  • 1

    インドネシア大統領ジョコ、米国の哨戒機給油要請を拒否

  • 2

    スリランカが日本支援のライトレール計画を中止したのは......

  • 3

    菅首相、訪問先のインドネシアで500億円の円借款供与 ジョコ大統領と安保、医療でも協力を決めたが──

  • 4

    新型コロナ、スウェーデンは高齢者を犠牲にしたのか

  • 5

    北朝鮮の新型ICBMは巨大な張りぼてなのか?

  • 6

    台湾近くに極超音速ミサイル「東風17号」を配備した…

  • 7

    「新型コロナウイルス、絶滅する可能性は低く『永久的…

  • 8

    返済が一生終わらない......日本を押しつぶす住宅ロ…

  • 9

    台湾当局「中国の『フーリガン』外交官恐れず建国記…

  • 10

    6割が不詳・死亡などの「不安定進路」という人文系博…

  • 1

    スリランカが日本支援のライトレール計画を中止したのは......

  • 2

    習近平、中国海兵隊に号令「戦争に備えよ」

  • 3

    中国のネットから消された「千人計画」と日本学術会議研究者たち

  • 4

    在韓米軍、駐留費引き上げで合意なければ韓国人職員9…

  • 5

    アフリカ支援を渋りはじめた中国──蜜月の終わりか

  • 6

    トランプ「土壇場の大逆転」2度目は空振り? 前回と…

  • 7

    韓国は中国を気づかって、米日豪印4ヶ国連携「クアッ…

  • 8

    インドネシア大統領ジョコ、米国の哨戒機給油要請を…

  • 9

    グアムを「州に格上げ」して中国に対抗せよ

  • 10

    菅首相、訪問先のインドネシアで500億円の円借款供与…

  • 1

    中国人民解放軍、グアムの米空軍基地標的とみられる模擬攻撃の動画公開

  • 2

    スリランカが日本支援のライトレール計画を中止したのは......

  • 3

    韓国ネット民、旭日旗めぐりなぜかフィリピンと対立し大炎上に

  • 4

    日本学術会議は最後に大きな仕事をした

  • 5

    金正恩「女子大生クラブ」主要メンバー6人を公開処刑

  • 6

    習近平、中国海兵隊に号令「戦争に備えよ」

  • 7

    その数333基、世界一のダム輸出国・中国の「無責任」

  • 8

    注意喚起、 猛毒を持つふさふさの毛虫が米バージニア…

  • 9

    日本がついに動く実物大のガンダムを建造、ファンに…

  • 10

    中国のネットから消された「千人計画」と日本学術会…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!