コラム

韓国における新型コロナワクチン接種が加速、接種開始7日目で累計接種者数が22.5万人を超える

2021年03月05日(金)21時11分

韓国政府はこれまでCOVAX配分量1000万人分、アストラゼネカ社1000万人分、ファイザー社1300万人分、米モデルナ社2000万人分、米ノババックス社2000万人分、ベルギーのヤンセン ファーマ社600万人分、計7900万人分のワクチンを契約で確保していると発表している。但し、他の国でもワクチンを確保するための競争が広がっており、今後ワクチンが適時に供給されない可能性もあるだろう。

2番目の理由としては両国のワクチン接種の対象者が現時点で異なる点が挙げられる。日本の場合3月4日時点のワクチン接種の対象者はワクチンの「先行接種」に事前同意している医療従事者約4万人に制限されている。一方、韓国は療養施設の入所者や従事者、そして医療従事者など対象者の範囲が日本より広く、現時点では日本よりワクチンの接種者数が多いと考えられる。

2月から量産開始

3番目の理由としては、韓国はファイザーワクチンなどの新型コロナウイルスワクチン接種のために使われる特殊型注射器4000万本を1月末に契約完了し確保した。日本はこの注射器を適時に確保できなかった。通常の注射器では1瓶で5回しか接種できないが、この特殊型注射器を使用すると6回接種できる。韓国の医療機器メーカーはこの特殊注射器の量産を2月からスタートさせ、3月からは生産量を月2000万個まで増やす計画である。

とはいえ、今後ワクチンの対象者が段階的に拡大されると日本でも韓国以上にワクチンの接種が行われると考えられる。なぜなら日本のワクチン確保量は1億5700万人分で韓国の7900万人分を大きく上回っているからである。

但し、より効率的にワクチンを接種するためには特殊注射器の不足問題を解決する必要がある。ワクチンとともに特殊注射器が安定的に供給されるようになれば、新型コロナウイルスの脅威から国民の健康をより守ることができるようになるだろう。また、安全性が少しでも担保されることによって、日本にとって重要な位置を占めるオリンピック開催に一歩近づくことができるだろう。

日本のマスコミによると、日本政府はすでに新型コロナワクチン接種用の特殊注射器約8千万本を韓国に購入要請しているそうだ。筆者としては韓国政府が日韓関係の改善のために、また日本のオリンピックの成功的な開催のために韓国の医療機器メーカーが開発・生産している特殊注射器を無条件で日本に供給することを望む。両国の大事な命を守るために両国が協力する必要性が益々高まっていることを日韓の政治家らがぜひ理解していただきたい。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員、亜細亜大学特任准教授を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 5

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story