コラム

韓国の若者の本当の失業率は26.8%?

2020年08月14日(金)13時59分

一方、非労働力人口とは、労働力人口以外の者で、病気などの理由で就業できない者と就業能力があるにも関わらず働く意思がない者を合計した人口である。これには、職場からリタイアした高齢者、職探しをあきらめた人、働きに出ない、あるいは出られない専業主婦や学生などが含まれる。上記の定義を基準とした2020年6月時点における韓国の15~64歳の非労働力人口の割合は30.9%で、同時点の日本の20.4%より高い。さらに、15~24歳と25~34歳の非労働力人口の割合はそれぞれ71.1%と23.1%で、日本の50.2%や12.1%を大きく上回っている。

日韓における年齢階層別非労働力人口の割合
shitugyo hirodo.png
出所)韓国、統計庁の「2020年6月雇用統計」、日本は、総務省の「労働力調査」を利用して筆者作成

このように韓国で非労働力人口の割合が高い理由としては「潜在的な失業者」が多く存在していることが挙げられる。韓国における非労働力人口の内訳を見ると、育児、家事、学業、高齢、障がい等を理由としたもの以外に、働く能力があるにも関わらず仕事を探していない「休業者」の割合が全非労働力人口の13.9%を占めている。また、就業準備のために仕事を探していない人が4.8%もいる状況だ。彼らは調査期間中に仕事を探す活動をしていないので失業者ではなく非労働力人口に分類される。

コロナで日雇い職が消えた?

2020年6月時点の休業者の構成比を年齢階層別にみると、60歳以上が38.6%で最も高く、次いで50~59歳(19.4%)、20~29歳(18.1%)の順になっている。しかしながら、前年同月と比べた増加率は30~39歳や20~29歳がそれぞれ29.0%、28.1%と他の年齢階層の増加率を大きく上回っている。新型コロナウイルスの影響で20代や30代を中心とする臨時職や日雇い職の仕事がなくなった可能性が高い。2019年8月現在の非正規労働者の割合は36.8%で、2008年以降最も高い数値を記録しており、近年は若者の非正規労働者も増加傾向にある。このように多くの人が非正規労働者として労働市場に参加することにより就業者数は増え、統計上の失業率は低下しているのだ。

韓国における非正規労働者の割合の推移
shituryo hiseiki.png
出所)統計庁「経済活動人口調査」より筆者作成

また、自営業者の割合が高いことも統計上の失業率を低くする理由になっている。韓国における自営業者の割合は2018年時点で25.1%とOECD加盟国の中で5番目に高く、日本の10.3%を大きく上回っている。特に、自営業者の相当数は給料をもらっていない無給の家族従業者であり、彼らの多数が調査期間中に仕事を探しておらず、失業率の計算に反映されていないと言える。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所客員研究員、日本女子大学人間社会学部・大学院人間社会研究科非常勤講師を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英サービスPMI4月改定値、約1年ぶり高水準 成長

ワールド

ノルウェー中銀、金利据え置き 引き締め長期化の可能

ワールド

トルコCPI、4月は前年比+69.8% 22年以来

ビジネス

ドル/円、一時152.75円 週初から3%超の円高
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story