コラム

韓国政府、新型コロナウイルス対策で手厚い弱者救済策

2020年03月06日(金)11時15分

景気対策の内容は、大きく1)防疫支援、2)消費活性化、3)自営業者や小商工人(常時10人未満の労働者を使用する企業)及び中小企業支援対策、4)その他の対策に区分することができる。その主な内容は次の通りである。

1)防疫支援

感染者が集中している大邱や慶北地域の医療機関や脆弱階層に対して総計700万枚のマスクを無料で支給する。また、バスやタクシードライバーなど、人との接触が多い職種に従事している人に対して約150万枚のマスクを優先的に支給する。

2)消費活性化対策

クレジットカード決済に対する所得控除率を使用金額の15~40%から30~80%に拡大する。自動車購入時に適用される個別消費税を70%引き下げる(上限は100万ウォンで2020年3月から6月までに臨時的に実施)。また、地域における消費を喚起・下支えするため、地域限定商品券の発行規模を3兆ウォンから6兆ウォンに拡大し、商品券購入時の割引率を5%から10%に拡大する。さらに、省エネ家電を購入した場合には支払い金額の10%を還元する。

3)自営業者や中小企業・小商工人に対する対策

零細自営業者に対して付加価値税の減税を2021年末まで実施する。これにより約90万人の零細自営業者の税負担が1年基準で平均20万~80万ウォン減り、2年間で総額約8000億ウォンが減税される。また、超低金利融資の規模を1.2兆ウォンから3.2兆ウォンまで増額し、小商工人に対する経営安定資金融資の貸出金利も2.3%から1.5%まで引き下げる。

さらに、民間の建物の持ち主が小商工人の賃貸料を引き下げると、引き下げた金額の50%に相当する金額を所得税や法人税から減免する。政府が所有している建物などの賃貸料も今年末までに3分の1水準まで引き下げる。

4)その他の対策

保育園の休園などにより緊急に保護者が休暇を使った場合、所得が減少することを補償するために8歳以下の児童を養育する保護者を対象に1日5万ウォンを最大5日まで支給する(夫婦合算で最大50万ウォンが支給される、ひとり親世帯は最大10日間利用可能)。また、高齢者就業支援事業に参加している高齢者が報酬の30%を商品券で受け取った場合、総報酬の20%にあたる商品券を追加的に支給する。さらに、低所得層には9万ウォン相当の商品券を支給する。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所客員研究員、日本女子大学人間社会学部・大学院人間社会研究科非常勤講師を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

円が対ドルで5円上昇、介入観測 神田財務官「ノーコ

ビジネス

神田財務官、為替介入観測に「いまはノーコメント」

ワールド

北朝鮮が米国批判、ウクライナへの長距離ミサイル供与

ワールド

北朝鮮、宇宙偵察能力強化任務「予定通り遂行」と表明
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story