コラム

韓国における日本製品不買運動の現状──年齢、支持政党、地域により大きな差が...

2019年11月06日(水)11時15分

韓国側の被害も少なくない。韓国国内の居酒屋や和食屋、そして日本向け旅行会社の売上も急減した。長崎県の対馬市で韓国人が運営する食堂やホテルも売上が急減し、廃業や休業が続出している。大韓航空は10月14日、勤続年数満2年以上の社員を対象に自己啓発、家族の世話、再充電などを積極的に支援できるよう短期希望休職制度を実施すると発表した。大韓航空は短期希望休職制度の実施が従業員のワーク・ライフ・バランスを支援するなど業務改善の一環であると発表しているものの、不買運動などの影響で日本への観光客が減少し赤字幅が拡大したことが原因である可能性もある。さらに、大韓航空やアシアナ航空のような航空会社のみならず、ハナツアー、MODETOURなどの旅行会社の株価も大きく下落している。韓国政府は日本の輸出規制の見直しや景気低迷により売上が減少した旅行・観光業界や日本製品の不買運動により被害を受けた零細自営業者にそれぞれ1,000億ウォンと100億ウォンの助成金を10月から支援し始めている。

日韓関係の悪化が続く中で10月24日に安倍晋三首相と韓国の李洛淵(イ・ナギョン)首相との会談が21分間行われた。1年ぶりの会談であり、対話の重要性や現状への危機感をともにしたのは評価できるものの、お互いの認識の差異を縮めることはできなかった。  

日韓関係が改善されるまでには思ったより長い時間がかかるかも知れない。しかし、時間がかかっても対話をし続けることを諦めてはならない。飛行機では約2時間しかかからない距離であるが、日本人と韓国人の考えは大きく異なる。普通に話してもアクセントの違いにより誤解されることもある。口ではやさしく言ったつもりだが、文章になるとその感情が伝わらなく、本当の気持ちが伝わらない場合もある。また、表現の違いにより誤解されることも多い。従って、今後はお互いを理解するための更なる努力が必要である。お互いに尊敬し合い、お互いの短所を言うよりは、長所を褒め、痛いところを触らないように努力することが大事である。まずは民間や企業が現在の関係を維持しながら、少しずつ改善していくと両国の関係は必ず良くなる。

実際、日本政府の輸出規制の見直しが発表される前までの韓国人の日本に対する印象は継続的に上昇している傾向であった。つまり、日本に対して「良い印象を持っている/どちらかといえば良い印象を持っている」と答えた割合は2012年の12.2%から2019年には31.7%まで上昇した。

相手国に対する印象の推移
kim1105_6.jpg
資料)特定非営利活動法人言論NPO(2019)「第7回日韓共同世論調査 日韓世論比較結果(2019.6.2)」


「元徴用工問題に対する日韓の溝埋まる」、「日本政府、輸出規制の見直しを撤回」、「韓国政府、GSOMIAの終了を撤回、日米韓協力の重要性を強調」、「不買運動が終了、日韓の交流が増加」という明るいニュースがマスコミから報道される日が来ることを首を長くして待っている。

20191112issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

11月12日号(11月6日発売)は「危ないIoT」特集。おもちゃがハッキングされる!? 室温調整器が盗聴される!? 自動車が暴走する!? ネットにつなげて外から操作できる便利なスマート家電。そのセキュリティーはここまで脆弱だった。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所客員研究員、日本女子大学人間社会学部・大学院人間社会研究科非常勤講師を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル軍、ラファ住民に避難促す 地上攻撃準備か

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、4月も50超え1年ぶり高水準 

ビジネス

独サービスPMI、4月53.2に上昇 受注好調で6

ワールド

ロシア、軍事演習で戦術核兵器の使用練習へ 西側の挑
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story