コラム

サッカー界は「言論の自由」を抑圧する国に手を貸している

2021年10月12日(火)06時20分

同様に、プーチン政権を批判していたジャーナリストのアレクサンドル・リトビネンコ(英国籍でもあった)が2006年にロンドンで放射性物質ポロニウムにより毒殺された事件や、同年に英南部ソールズベリーで神経剤ノビチョクにより1人が死亡、4人が重症を負った事件があったにもかかわらず、2018年のワールドカップ・ロシア大会をボイコットする選手などいなかった。

サッカーだけではない。僕がただ指摘したいのは、僕たちが愛するスポーツが、不道徳な政権のイメージ払拭にいかに手を貸しているか、ということだ。

ノルウェーのノーベル委員会が危険を省みず重要な役割を果たしたジャーナリストを称える一方で、イギリスでは名声高きプレミアリーグがジャーナリストを殺害した体制に由緒正しいクラブの買収を許すという皮肉に満ちたタイミングのおかげで。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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