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米、北京冬季五輪を外交ボイコット 中国「米は代償支払うことに」

2021年12月07日(火)19時57分

ホワイトハウスのサキ報道官は6日の定例記者会見で、米国は来年2月の北京冬季五輪に外交使節団を派遣しないと発表した。9月撮影(2021年 ロイター/Jonathan Ernst)

[ワシントン/北京 6日 ロイター] - ホワイトハウスのサキ報道官は6日、来年2月の北京冬季五輪に外交使節団を派遣しない「外交ボイコット」を発表した。中国による新疆ウイグル自治区などの人権侵害に抗議する狙いがある。米中関係の一段の緊張を招くのは必至だ。

報道官は「バイデン政権は北京冬季五輪に外交使節団や当局者を派遣しない。中国による新疆ウイグル自治区での虐殺や人道に対する罪、その他の人権侵害が理由だ」と述べた。ただ、米国選手団の派遣には影響せず、選手らを全面的に支援すると表明した。

米国オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)の最高経営責任者(CEO)、サラ・ハーシュランド氏は、外交ボイコットに関する発表後に声明で、米国選手団は「米国の誇りになる準備ができている」とし、「米大統領および米政権の揺るぎない支援に大いに感謝しており、冬季五輪を自国から応援してくれると確信している」と述べた。

サキ報道官によると、米国は今回の決定を同盟国に伝えたが、同盟国も外交ボイコットを実施するかどうかは各国の判断に委ねられているという。

米国務省のプライス報道官は、バイデン政権は米企業が外交ボイコットに参加することを望んでいるかとの質問に対し、「民間企業に対しては新疆ウイグル自治区を巡る状況を十分認識し、完全な情報を基に行動することを望んでいる」とした上で、民間企業が採用すべき活動を指示するのは米政府の役割ではないとした。

五輪の放映権に詳しいCBSスポーツ元幹部のニール・ピルソン氏は、五輪のスポンサー企業は「気まずい」思いをしているはずだが、政府は契約を打ち切るべきだと示唆したわけではないと指摘。スポンサーにとって「最も重要な問題は、米国の選手団が参加するかどうかだ」と語った。

米放送大手NBCユニバーサルの広報担当は、中国から五輪を中継する予定に変わりはないと述べた。

中国の在米大使館の報道官は米国の外交ボイコット表明を受け、電子メールで「こうした思い上がった行為は政治的な操作でしかなく、オリンピック憲章の精神を著しく歪める」と非難。「米国の政治家に招待状は全く送られていない。このため『外交ボイコット』にはそもそも根拠がない」と述べた。

中国外務省報道官は7日の定例会見で、米国の外交ボイコットにより、両国の重要分野の対話と協力に悪影響が出る可能性があると指摘。

五輪を妨害しようという米国の「企み」は失敗に終わる運命にあり、「倫理上の権威と信用」の失墜につながると述べた。

報道官は外交ボイコットに反対し「断固たる対抗措置」を講じるとも述べた。

報道官は「米国は誤った行動に対して代償を支払うことになるだろう」と発言。詳細には触れず「様子を見よう」と述べた。

米国で開催される五輪について外交ボイコットを検討するかとの質問には「(米国によるボイコットはスポーツ交流・協力の)土台と雰囲気にダメージを与えた」とし「石を持ち上げて人にぶつけようとしたが結局自分の足に落としてしまう」ようなものだと述べた。

報道官はスポーツから政治を排除するよう米国に要求。ボイコットはオリンピックの理念に反すると述べた。

国連中国政府代表部は外交ボイコットは米国の冷戦思考を反映していると指摘。「米国はスポーツを政治化し、分裂をつくり、衝突を引き起こしたいだけだ」とし「このやり方は支持を得られず、失敗する運命にある」との声明を出した。

国際オリンピック委員会(IOC)は五輪は「政治を超越」すべき存在だと指摘。広報担当者は「政府当局者や外交使節団の派遣は各政府による完全に政治的な決定で、IOCは政治的中立の立場から決定を尊重する」とした。

カナダ外務省は声明を出し、「中国での人権侵害に関する憂慮すべき報道を引き続き不安視している」と表明。米国の決定について知らされており、同盟国などとこの問題に関する協議を継続するとした。

豪州と日本の両政府は7日、北京五輪への対応をなお検討していると表明した。

岸田文雄首相は日本の対応について、「五輪の意義、わが国の外交にとっての意義を総合的に勘案し、国益の観点から自ら判断していきたい」と語った。

ニュージーランド(NZ)のロバートソン副首相は7日、北京五輪に閣僚級の外交使節団を派遣しないと表明した。新型コロナウイルスが理由だとした。

英国も外交ボイコットを検討するとしている。

中国国営メディアはこれまで、中国政府は外交ボイコットを検討している西側諸国の政治家を北京五輪に招待しないと報じている。中国の招待を受け入れた主要国はロシアのみとなっている。

欧州連合(EU)のサンニーノ対外行動庁事務総長は先週、外交ボイコットは加盟国が個別に決めることで、EU共通の外交政策ではないとの見解を示した。

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