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訂正-焦点:低迷する中国人民元、企業のドル積み上げが下落に拍車

2024年04月18日(木)08時36分

4月16日、中国企業は人民元安が一段と進むと見込んで手持ちのドル保有を積み上げており、こうした動きが国内株式市場の低迷と成長鈍化を背景とする人民元の下落に拍車を掛けている。写真は人民元と米ドルの紙幣。2023年1月査定(2024年 ロイター/Dado Ruvic)

(16日配信記事で、英文の訂正により、文中のゴアテック(歌爾股分)取締役のコメントを削除します。)

[上海 16日 ロイター] - 中国企業は人民元安が一段と進むと見込んで手持ちのドル保有を積み上げており、こうした動きが国内株式市場の低迷と成長鈍化を背景とする人民元の下落に拍車を掛けている。

ドル金利の上昇によって誘発されたこの悪循環は、中国本土の外為市場で数カ月前から続いている。中国人民銀行(中央銀行)のデータによると、外貨預金残高は昨年9月以降に537億ドル増加して8326億ドルに達した。

アナリストによると、人民元の下落スパイラル終息には米連邦準備理事会(FRB)が大幅な利下げに踏み切るか、もしくは人民元相場が何らかの形で底打ちする必要があるが、どちらも当面実現しそうもない。

人民元は5カ月ぶりの安値で推移している。外国人投資家が低迷する中国市場から資金を引き揚げているためで、年初から対ドルで1.9%下落した。2023年初めには1ドル=6.7元前後だったが、足元では7.24元前後で推移している。

人民元は国内の輸出企業からの定期的な資金流入が止まっている。国内の人民元預金の金利が1.5%なのに対して海外のドル預金で6%の金利が得られることから、企業がドルを海外の預金口座に留め置き、為替相場が優利になるのを待つ手法を選択しているためだ。

RBCキャピタル・マーケッツのアジアFX戦略責任者、アルビン・タン氏は「米中の金利差は2007年以降で最も大きい。この強力なファンダメンタルで、中国の輸出企業がドルの人民元転換に消極的な理由の説明に十分だと思う。この大きなプラスの利回りスプレッドがすぐに解消することはない」と述べた。

たとえ企業がドルを本国に持ち帰ることを選択しても、7日間の投資で4.4%もの金利を提供する海外ファンドに投資するドル建ての富裕層向け資産運用商品がある。一方、中国当局は昨年半ば以来、主要金融機関のドル預金金利の上限を2.8%に設定している。

スタンダード・チャータードの中国マクロ戦略責任者、ベッキー・リュー氏は「FRBの利下げが確実になり、ドルの軟化傾向がより明確になれば」、企業がドルを人民元に交換するきっかけになる可能性はあるという。

しかし最近の米国の堅調な経済統計を踏まえてFRBの利下げ時期の予想は今年末に先送りされ、ドルは急騰している。

つまり人民元は22年10月と23年7月に付けた底値の1ドル=7.3元まで下落し、当局が人民元の防衛に動く公算が大きい。

複数の投資銀行も、人民元は今年第3・四半期までに1ドル=7.3元まで下落するがこの水準で下げ止まると見込んでいる。上海を拠点とする銀行関係者によると、この関係者の一部顧客は現在7.3元をドル売り発動の水準にしているという。

<当局は冷静保つ>

中国当局は企業や市民によるこうしたドル保有の積み上げにそれほど神経を尖らせていないようだ。通常、中国人民銀行に代わって市場介入する国営銀行が人民元安を食い止めるために人民元を買っている。

人民銀行はコメント要請に応じなかった。

バークレイズのストラテジスト、レモン・チャン氏は、輸出企業がドルの人民元転換を渋る姿勢は今後2四半期続くとみている。中国の規制当局が輸出企業にドルの人民元転換を強制することはないが、転換を促すために小規模なマクロプルデンシャル措置や税制優遇措置が導入される可能性があると言う。

人民元は下落したものの、いくつかの貿易相手国通貨に対してはそれほど急落しておらず、特に対円ではそうだ。そのため中国は輸出競争力が低下、貿易収支が悪化しており、昨年の財の貿易黒字は前年比11%減の5939億ドルだった。

*16日配信記事で、英文の訂正により、文中のゴアテック(歌爾股分)取締役のコメントを削除します。

ロイター
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