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焦点:世界株安で蘇る「バリュー株」人気、成長株は後退

2018年11月19日(月)10時35分

11月15日、史上最長級の株式強気相場が終わりを迎えようとしている今、成長株ブームの陰で壁の花を演じていた「バリュー株」が突如脚光を浴び始めた。東京証券取引所で2018年10月撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

[ミラノ/ロンドン 15日 ロイター] - 史上最長級の株式強気相場が終わりを迎えようとしている今、成長株ブームの陰で壁の花を演じていた「バリュー株」が突如脚光を浴び始めた。

バリュー株は一般に、企業の根本的な価値が現在の株価に反映されていない株を指す。世界的に株価が急落した10月初め以来、欧州ではバリュー株が成長株をアウトパフォームしている。

米ハイテク大手や欧州の高級ブランド大手など、高成長を誇る企業は、過去10年間に中央銀行が実施した超金融緩和によってとりわけ恩恵を受けてきた。対照的にバリュー株は割安化の一途をたどり、一部で買いの好機が訪れている。

投資家は来年に向け、銀行、建設、自動車、通信といった銘柄を物色し、株価がキャッシュフローを十分反映していないのではないか、その他の株価指標も過去平均を下回ったり、業界全体から逸脱していないかと、目を光らせている。

米ブランデス・インベストメント・パートナーズのルイズ・サワーブロン氏は「10年を経て、ようやく面白くなってきた。これまではハイテク株や成長株一色だった。過去10年、バリュー株がアウトパフォームしたのは欧州で数年間だけだったが、10月には状況がずっと好転した」と話す。

世界の株式時価総額は10月に一時7兆ドルも縮小したが、欧州バリュー株<.MIEU0000VPEU>の下落率は4.3%にとどまった。これに対して欧州成長株<.MIEU0000GPEU>は6.5%の下落と、2015年8月以来で最悪の動きになった。

11月に入ってもバリュー株のアウトパフォームは続いている。

とはいえ、欧州の成長株は2009年の安値からなお150%上昇しているのに対し、バリュー株の上昇率は100%だ。

サワーブロン氏は「成長株は大いにゼロ金利の恩恵を受けてきた。それが永遠に続くとは思いたくないし、思わない」と語った。

<バリュートラップに注意>

しかしバリュー株の見極めは言うほど簡単ではない。何より難しいのは、もっともな理由があって下落している株を買ってしまう「バリュートラップ(バリューの罠)」を避けることだ。

バーンスタインのストラテジストチームは、失敗すればリターンが大きく損なわれると警告する。

同チームは英資源大手アングロ・アメリカン、イタリアの石油サービス会社サイペム、ドイツ航空大手ルフトハンザなど、欧州の鉱業、石油、航空、建設、小売り株をいくつか推奨している。

サワーブロン氏は、低落したたばこ株も魅力が増してきたとして、このセクターへの投資を増やしている。

バリュー株の特徴の1つは、バリュエーションが過去平均を下回っていることだ。例えばアングロ・アメリカンの株価はキャッシュフローの0.5倍前後と、過去平均の0.7倍を下回っている。スイスの資源大手グレンコアも0.5倍(過去平均は0.7倍強)だ。

銀行では、イタリアのウニクレディトの株価純資産倍率(PBR)が0.5倍と、ユーロ圏の銀行全体に比べて28%低い。

ただインベステック(香港)で株式運用を担当するマーク・ブリードン氏は「これらの株が明日上がるかと言えば、おそらくノーだ」と指摘。「問題は正しいタイミングをつかむこと。決して落ちるナイフをつかまないためには、これらの企業(の業績)が予想を上回り始めたり、テクニカル上のモメンタムが芽生えるのを見極めなければならない」とくぎを刺した。

(Danilo Masoni記者 Josephine Mason記者)

ロイター
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