コラム

窮地のトランプは「法と秩序」カードで68年ニクソン勝利の再現を狙う

2020年06月17日(水)19時30分

アメリカの選挙制度では地方の州が優遇され、そうした地域では共和党とトランプが強い。前回の大統領選でヒラリー・クリントンより総得票数の少なかったトランプが勝利できたのは、地方に住む保守派の白人を厚遇する構造的バイアスのおかげだ。

しかし、今のアメリカは1968年とは違う。当時は法と秩序を軸にした保守派の恐怖政治と、リベラルの革新的な希望の政治という構図が明確だった。有権者の9割は白人で、黒人は1割ほど。だが今や白人は67%にすぎず、黒人は約13%となった。過半数がトランプを支持するのは白人男性層のみだが、彼らはもはや圧倒的多数派ではない。

そしてトランプのファシスト的傾向の問題がある。再選を果たすためなら、汚い手を使ったり、選挙日程を遅らせるのではないか。トランプの独裁的な言動と「私が勝てば選挙結果を尊重する」といった発言を考えると、そんな不安が拭えない。

<本誌2020年6月23日号掲載>

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2020年6月23日号(6月16日発売)は「コロナ時代の個人情報」特集。各国で採用が進む「スマホで接触追跡・感染監視」システムの是非。第2波を防ぐため、プライバシーは諦めるべきなのか。コロナ危機はまだ終わっていない。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

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