コラム

「女性蔑視発言」に揺れる日本、真の(非中国的)男女平等を目指せ

2021年02月20日(土)12時05分
周 来友(しゅう・らいゆう)

Kim Kyung-Hoon-Pool-REUTERS

<中国は女性の社会進出では日本よりずっと進んでおり、30数年前、その中国から来た私の目に日本は「完全な男社会」に映った。森さんが五輪組織委会長を辞めることになり、今こそ日本が変わるチャンスだが、中国みたいなやり方はやめたほうがいい>

東京五輪・パラリンピック大会組織委員会会長の森喜朗氏が、女性蔑視とも取れる発言により辞任に追い込まれた。抗議デモが行われ、国外からも批判が殺到するなど散々だった。

森さんと言えば、過去にも度々「失言」で批判を浴びたり、10年前には病気で息子を亡くしたりと、「酸甜苦辣」の人(酸いも甘いもかみ分け、世情に通じた人)という印象がある。年寄りらしい愛嬌もあり、私はむしろ同情の気持ちが強かった。

ただ、今回の発言は当然許されるものではない。もう表舞台からは退場すべき人なのだろう。

この騒動で感じたのは、日本社会も変わってきたということだ。私が来日した30数年前と比べると、大きく進歩したと思う。当時、私の目に日本は「完全な男社会」に映った。

会社でお茶を入れたり、飲み会でお酌をするのは女性の役割。それって差別じゃないの? と疑問に思った。

ホームステイ先の家で「一番風呂はお父さんが入るもの」と聞かされたときも、まったく理解できなかった(一説には、一番風呂は熱湯だから先に入るのは女性に対する優しさ、ということらしいが......)。

男らしさとか、女らしさといった言葉が飛び交っていた。

中国人にそんなこと言われたくない──そう思う人がいるかもしれない。中国こそ男尊女卑の社会じゃないか、と。

それは誤解だ。中国は女性の社会進出では日本よりずっと進んでおり、女性がCEOを務める上場企業は約5%(日本は約1%)。日本の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)で、女性議員は全体の約25%(日本の衆議院では約10%)。

夫婦共働きが大半で、昇進や転職のチャンスもほぼ男女平等だ。女性が上司にビールをつぐ必要もない(そもそも「飲みニケーション」が中国にはほとんどない)。

そんな中国社会の基盤をつくったのは、実は毛沢東だ。独裁者のイメージが強いが「天の半分は女性が支える」と女性の地位向上を推進した。半世紀以上前の話である。

そして「みんな等しく貧しい」社会主義体制の下、女性は着実に社会に進出していった。その結果が今の中国だ。おおむね性差のない実力社会となっている。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国政府、不動産部門のリスクを制御へ=副首相

ワールド

米アップル、独禁法訴訟を退けるよう求める iPho

ビジネス

マイクロン、24年設備投資見通し引き上げ AI関連

ビジネス

機械受注3月は前月比2.9%増、判断「持ち直しの動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「目を閉じれば雨の音...」テントにたかる「害虫」の大群、キャンパーが撮影した「トラウマ映像」にネット戦慄

  • 4

    9年前と今で何も変わらない...ゼンデイヤの「卒アル…

  • 5

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 6

    服着てる? ブルックス・ネイダーの「ほぼ丸見え」ネ…

  • 7

    高速鉄道熱に沸くアメリカ、先行する中国を追う──新…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    「韓国は詐欺大国」の事情とは

  • 10

    中国・ロシアのスパイとして法廷に立つ「愛国者」──…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 10

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story