最新記事

日本社会

沖縄、本度復帰50年 対中国の最前線として進む「要塞化」

2022年5月14日(土)11時06分

仲里さんの農場の真横にある駐屯地はかつてゴルフ場だった。中国が海洋進出を強める中で日本政府は南西諸島に次々と基地を建設し、宮古島にも陸自のミサイル部隊を置いた。中国本土に最も近いミサイル拠点であり、沖縄本島と宮古島の間を抜けて西太平洋へ出ようとする中国海軍の艦艇に対するけん制にもなる。

「軍事要塞のようになっていくのが心配だ。小さな島なので、基地があると守られるのではなく戦争を呼び寄せる」と、基地反対を訴える清水早子さん(73)は言う。1995年に島へ移住した元塾講師の清水さんは仲里さんの畑にのぼりを立て、毎週1回、基地の前で抗議を続けている。「声を実際に上げてアクションを起こす人は目に見えては多くない。しかし、これを喜ばない人たちはたくさんいる」と清水さんは語る。

今年3月に赴任した駐屯地司令の伊與田雅一・1等陸佐は、任務を果たすには地元の理解が欠かせないと考えている。島の行事に参加したり、支援をすることで、「交流を図って理解を得る努力を続けていく」と話す。

駐屯地にはおよそ700人の隊員が駐在し、地対艦ミサイル部隊などを配備している。伊與田1佐は「1200キロに及ぶ南西諸島全体の各種事態に迅速に対応する」とし、「現在の体制はまだまだ十分とは言えない」と語る。

軍事拠点増強、次の計画

日本政府は年内に国家安全保障戦略を改定する。防衛費の増額を求める声が高まっていることから、宮古島の体制も強化される可能性がある。

与党・自民党は戦略見直しの一環として、敵の作戦拠点や司令部を叩く長距離弾の導入を要求しているが、琉球大学の我部名誉教授は宮古島に攻撃的な兵器を配備することはないとみる。600キロしか離れていない中国を刺激する恐れがあるためだ。

防衛省の元高官は、宮古島を増強するなら橋でつながった下地島空港の軍用化になる可能性があると指摘する。民間航空会社の操縦士を訓練するために建設された3000メートル級の滑走路を持つ空港で、週末は東京などと結ぶ便が就航している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル軍、ラファ住民に避難促す 地上攻撃準備か

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、4月も50超え1年ぶり高水準 

ビジネス

独サービスPMI、4月53.2に上昇 受注好調で6

ワールド

ロシア、軍事演習で戦術核兵器の使用練習へ 西側の挑
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 10

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中