最新記事

メンタルヘルス

その不安、実は「仮性不安」かも...まず疑うべきは脳ではなく「血糖値の変動」

It’s Not All in Your Head

2022年4月1日(金)17時21分
エレン・ボラ(機能性医学精神科医)
メンタルヘルス

食事やスマートフォンとの付き合い方を工夫することで不安感はかなり解消できる EUGENE MYMRINーMOMENT/GETTY IMAGES

<コロナ後、不安と鬱の症状を訴える人は27%増えた。だが本当の原因は生理的バランスの崩れ? それならシンプルなアプローチで解消できる>

2019~20年には不安の諸症状とメンタルヘルスの不調を訴える人が3倍に増えたと、米疾病対策センター(CDC)が報告している。ポストコロナの新しい日常を生きるには、心の健康を守る新しいアプローチが必要なようだ。

機能性医学精神科医のエレン・ボラは新著『不安の解剖学(The Anatomy of Anxiety)』で新しい視点から不安に対処するユニークなアプローチを紹介している。以下の抜粋は、ポストコロナ時代を生きる私たちに貴重な示唆を与えてくれるはずだ。

* * *

世界には不安障害に苦しむ人がおよそ3億人いる。パンデミックが3年目に入った今、この膨大な数字はさらに膨れ上がろうとしている。米カイザー家族財団の調査によると、19年に比べ21年には不安と鬱の症状を訴える人が270%増えたという。統計データを挙げるまでもない。コロナ禍に劣らず、不安もまた多くの人を苦しめていることを私たちは痛感している。

見方によっては統計データは一筋の希望も与えてくれる。不安障害が主として遺伝的要因によるものなら、これほど急速に増えるはずがない。私たちの遺伝子には3年やそこらで変異を遂げ、不安を増幅させるなどという芸当はできない。つまり、慢性的なストレスや社会的孤立など、現代生活に付き物のプレッシャーが不安を駆り立てている、ということだ。

ストレスの原因を全てなくすのは不可能だが、食生活や睡眠習慣からスマートフォンとの付き合い方まで、私たちが変えられることはいくつもある。そして、それによって私たちは社会を覆う陰鬱ムードも変えられるかもしれない。

■不安の新しい分類

医学生時代には不安障害、パニック障害といった不安の分類を教わったが、臨床経験を積むうちに別の分類のほうが治療に役立つと分かってきた。

私は不安を「仮性」と「真性」の2つに分けている。真性不安は生き方を見直す契機となる不安、対して仮性不安は自律神経など体内のバランスの崩れに起因する不安だ。

ストレス反応でバランスが崩れると、体は脳に「何かおかしい」という信号を送る。脳は「意味付け」の天才だから、すぐに理由をでっち上げる。仕事や子供のことが心配だとか戦争やテロのニュースを見て気持ちが塞ぐなどだ。

だが本当の原因は体の生理的なバランスの崩れかもしれない。不安の多くは、実のところ「心配事」とは全く無関係に生じるのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 7

    ロシア黒海艦隊「最古の艦艇」がウクライナ軍による…

  • 8

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中