最新記事

日本政治

静岡敗北で自民党に広がる動揺 衆院選次第で岸田首相の求心力に影響も

2021年10月25日(月)19時16分
岸田文雄首相

岸田文雄政権初の国政選挙となった参議院の静岡補選から一夜明けた25日、首相が2度現地入りしながら敗れたことに自民党内では動揺が広がった。写真は報道各社の取材に応じる岸田氏。25日午前、東京で撮影(2021年 時事通信)

岸田文雄政権初の国政選挙となった参議院の静岡補選から一夜明けた25日、首相が2度現地入りしながら敗れたことに自民党内では動揺が広がった。今週末に投開票を迎える衆院選は複数の世論調査で単独過半数の確保が危ぶまれており、結果次第では来夏の参院選へ向けて岸田首相の求心力に影響が出かねないとの声も聞かれる。

静岡補選は共産党が候補者を擁立し、野党候補が2人並立、3候補の争いとなったため、自民党が公認、公明党が推薦した若林洋平・前御殿場市長が優勢とみられていた。しかし、地元で人気の高い川勝平太知事の本格支援により、野党系候補で無所属の山崎真之輔・元静岡県議が追い上げ、最終的に5万票に近い大差で勝った。

自民党幹部の側近は、リニア中央新幹線の建設計画が進むなど静岡県特有の事情が影響したと解説する。「大井川の水資源に影響があるとしてリニアの工事に反対している川勝知事が保守層にも支持されている」と、この側近は話す。同日に行われた参院山口補選は比例代表から転出した自民党の北村経夫氏が勝利した。

それでも、衆院選の投開票を直前に控えた自民党内からは懸念の声が出ている。ある自民党関係者は、静岡県ならではの事情があったとした上で、「マスコミは現執行部の責任を書いてくるだろう。実際、今の執行部で大丈夫ということにはならない」と話す。

法政大学大学院の白鳥浩教授(現代政治)は、「川勝知事の影響もあったが、無党派をどう取り込んだかが選挙の鍵だった」と指摘。ツイッターなどソーシャルメディアを多用した山崎氏の選挙戦略を評価した上で、「自民党側は自己修正するだろう。衆院選投票日までどう反撃してくるか今後の注目点だ」と述べた。

岸田首相は25日午前、記者団に対し、「ぜひ気持ちを引き締めて衆議院選挙に臨んでいきたい」と語った。一方、最大野党である立憲民主党の安住淳国対委員長は「大きな自信になった。衆議院選挙に想像を超えるようなインパクトを与えるかもしれない」と述べた。

「世論のしっぺ返し」

報道各紙の世論調査によると、衆院選序盤の情勢は289ある小選挙区の多くで与野党候補が接戦を繰り広げられている。立憲民主党と共産党の選挙協力が奏功した格好だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トムソン・ロイター、第1四半期は予想上回る増収 A

ワールド

韓国、在外公館のテロ警戒レベル引き上げ 北朝鮮が攻

ビジネス

香港GDP、第1四半期は+2.7% 金融引き締め長

ビジネス

豪2位の年金基金、発電用石炭投資を縮小へ ネットゼ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中