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習近平さえいなくなれば中国共産党は良くなるのか?

2021年5月17日(月)14時20分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
習近平国家主席

習近平(中共中央総書記・中央軍事委員会主席・国家主席) Jason Lee-REUTERS

昨年、中央党校の元教授・蔡霞氏が在米中に「習近平がいなくなれば中国共産党は良い党になれる」と発言したが、そうだろうか?彼女は天安門事件まで人民を殺害するのは日本軍と国民党軍だけだと思っていたという。

元中央党校教授の「習近平さえいなくなれば」の論法

中国共産党員の幹部候補生を養成する中国共産党中央委員会党校(中共中央党校)(略称:中央党校)の退官教授だった蔡霞氏が昨年6月に在米中のある集まりで喋った20分間の声が録音されネットで公開されたことがある。そこでは「習近平は暴力団のボスで、党内の全ての人(党員)は習近平の奴隷(奴才=奴隷根性の人)であり、人権も法治もすでになく、習近平は一線を退いて隠居すべきだ」という趣旨のことを言っている。

そこで中央党校では10回ほど彼女に電話を掛けてきて「帰国しろ」と要求したが、身の安全が保障されないので帰国しないと回答し、昨年8月17日に党員として除籍になった。

その後、数多くのアメリカ・メディアから取材を受けているが、その中で彼女が「習近平さえいなくなれば、共産党は良い党になる」と言っていることが気になる。

そうだろうか?

中国共産党そのものが「罪悪」であって、誰がトップに立とうと変わらないのではないだろうか?

人民を虐殺したのは天安門事件が初めてではない

何よりも驚いたのは、蔡霞氏が1989年6月4日に起きた天安門事件で鄧小平が民主を叫ぶ若者を中国人民解放軍に武力弾圧せよと命じて断行したことに関して「私はそれまで解放軍は人民を守るためにいるのであって、人民を殺すのは日本軍と国民党反動派のみだと思っていました」と吐露していることだ。

まだ新中国(現在の中国=中華人民共和国)が誕生する前の1948年、毛沢東は1947年から食糧封鎖し始めた長春に対して、林彪との往復書簡の中で「長春を死城たらしめよ」と言っている。私の兄弟はその中で餓死し、私は長春から脱出するために餓死体が敷き詰められた上で野宿し、恐怖のあまり記憶喪失になった経験を持つ。

長春だけでも、中国共産党軍によって餓死させられた無辜の民の数(中国人)は数十万に上る。

毛沢東にとって、そんなことは全く意に介す必要のないことで、「人民などは雑草のようなもので、いくら刈り取っても後からあとから生えてくるので、ざっと300万人くらいは殺してもどうということはない」と考えていた。

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