最新記事

宇宙

ロケット危険視は「中国の知性に対する侮辱」と中国逆ギレ

Chinese Media Calls Rocket Debris Fears 'Anti-Intellectual' After Landing

2021年5月11日(火)16時23分
ジェームズ・ウォーカー
長征5号Bの打ち上げ

制御不能状態となり地表への落下が懸念されていた長征5号B China Daily via REUTERS

<制御不能になったロケットの残骸が地表に落ちるかもしれなかった中国が、無事とわかった後になって「アメリカのあら探し」を批判>

中国の大型ロケット「長征5号B」が5月9日、制御不能のまま大気圏に再突入した。地表に落下して被害が出る恐れもあったため、アメリカの複数の科学者やNASAがこれに懸念を表明したことに、中国メディアが嚙みついた。

共産党機関紙「人民日報」系のタブロイド紙である「環球時報」は9日、ウェブサイトに掲載した論説で、長征5号Bの残骸が「特に危険」だと考えるのは「知性に対する侮辱も甚だしい」と主張。アメリカの報道を「中傷」と非難し、長征5号Bの落下をめぐるアメリカの「小うるさい口出し」は「下劣な策略」だと主張した。だがその一方で、中国政府として今後「積極的により多くの情報を公表していく」必要があるとも認めた。

「60年近い宇宙開発の歴史のなかでも、ロケットの残骸の計画的落下による被害は出ていない」と同紙は述べ、こう続けた。「それに、落下してくるロケットの残骸がもたらすリスクは、どこの国のロケットであれ同じだ。中国のロケットの残骸が特に危険だという主張は、反知性主義だ」

中国を貶める策略

さらに同紙は、アメリカ政府は宇宙ステーション建設に向けた中国の取り組みの「あら探しをしたり、評判を落としたりし続ける」つもりなのだと書き、中国政府の当局者たちに「適切なタイミングで国際社会に情報を伝え、アメリカ政府から中国政府に向けて投げつけられた泥を、できる限り振り払う」よう呼びかけた。

中国の宇宙開発当局(中国有人宇宙事業弁公室)は9日、長征5号Bがモルディブ近くのインド洋に落下したと発表。残骸の大部分は、大気圏再突入時に燃え尽きたと主張した。

一方、残骸の監視を続けていた米宇宙軍は、長征5号Bが(米東部時間の)8日夜にアラビア半島上空で大気圏に再突入したことを確認したが、同ロケットの残骸が地上と海上のどちらに落下したのかは不明だと発表。「残骸が落下した正確な場所も範囲も、現時点では不明であり、米宇宙軍が今後それらの情報を発表する予定はない」とつけ加えた。

またNASAは、同ロケットの大気圏突入後に声明を出し、中国政府の当局者らが「(宇宙ごみについて)責任ある基準を満たしていない」と非難。彼らには、地上の人々や器物に及ぼすリスクを最小限に抑える責任があると指摘した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

海運マースク、第1四半期利益が予想上回る 通期予想

ビジネス

アングル:中国EC大手シーイン、有名ブランド誘致で

ビジネス

英スタンチャート、第1四半期は5.5%増益 金利上

ワールド

トルコ製造業PMI、4月は50割れ 新規受注と生産
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中