最新記事

日本経済

日銀「物価の眼鏡」は節穴? 国民は実感、容量減「シュリンクフレーション」

2018年2月23日(金)13時27分

2月23日、国民が日々の生活のなかで物価上昇を実感する一方で、日銀の「物価の眼鏡」で見た世界ではインフレが沈静化しているが、物価の眼鏡を取り換えれば、リアルなインフレの姿が見えてくる。写真は八百屋で買物をする女性。2016年1月に東京で撮影(2018年 ロイター/Yuya Shino)

国民が日々の生活のなかで物価上昇を実感する一方で、日銀の「物価の眼鏡」で見た世界ではインフレが沈静化している。このため、今年も異次元緩和が継続される見込みが高いが、物価の眼鏡を取り換えれば、リアルなインフレの姿が見えてくる。

日銀の「コア眼鏡」と国民の実感にズレ

総務省がきょう公表した1月の全国消費者物価指数(CPI)では、日銀がインフレ判断のベンチマークとする「生鮮食品を除く総合指数、コアCPI」が前年同月比0.9%上昇。生鮮食品およびエネルギーを除く総合指数は前年同月比0.4%上昇と、引き続き物価が低迷していることを示された。

しかし、日銀がコアCPIという「物価の眼鏡」を外せば、世界は変わってみえる。

国民の生活実感により近いとされ、厚生労働省が実質消費や実質賃金の計算に用いる「持ち家の帰属家賃を除く総合指数」では、全国ベースで1月に前年同月比1.7%の上昇だった。昨年12月は同1.3%上昇、11月は0.7%の上昇だった。

東京都区部の確報値では、1月が前年同月比1.7%上昇と、12月の同1.3%上昇、11月の同0.4%上昇から、こちらも上昇ピッチが速まっている。

持ち家の帰属家賃とは、実際には家賃の受け払いを伴わない住宅等について、通常の借家と同様のサービスが生産・消費されるものとみなして、それを市場価格で評価した帰属計算上の家賃をいう。

寄与度でみると、こうした持ち家世帯の架空家賃が1月の総合指数(前年同月比1.4%上昇)から0.3%ポイントも統計上のインフレを「押し下げ」ていることになる。

日銀がインフレのベンチマークとするコアCPIと、消費者が直面する現実の物価上昇率1.7%の間には、0.8%ポイントもの格差があり、この格差は生鮮食品の大幅な価格上昇と、実体のない持ち家世帯の家賃の下落が統計上、物価を押し下げていることから生じている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中