コラム

コロナ禍の中で始まった欧州サッカー選手権、コロナ対策はオリンピックとどう違う?

2021年06月15日(火)13時34分

さらに一つ推測すると、オリンピックで観客を入れるのか無観客になるかは、かなり前より「6月に決める」と言われていた。様子を見るにしても、なぜそこまで直前に決めるのかと思っていたが、この欧州選手権を実験台と見ているのではないか。

前述のように条件が全然違うし、欧州のみのイベントと世界のイベントでは全然異なる。欧州選手権を実験とみなしているのなら、日本は大変迷惑なのだが。

すでに混乱も起きている

今までもすでに、スペイン代表のキャプテンであるセルヒオ・ブスケツが、そしてスコットランド代表のジョン・フレックが陽性反応を示して、混乱が生じた。

ロンドンのウェンブリー・スタジアムは、9万人の収容能力を誇り、今大会では最大のスタジアムである。7月11日の決勝戦は、ここで行われる。

英国政府は、6月21日までにほぼすべての規制を緩和する政策を打ち出していたため、決勝戦では全席使用となるのではないかという期待がもたれていた。しかし、インド(デルタ)変異株の広がりのため、この期待は裏切られることになったという

このように、国によって違いはあるが、今、夏のバカンスシーズンを前にして、ヨーロッパ人はひとときの息抜きを楽しもうとしているかのようだ。ワクチン接種が大きな希望を与えているのだ。

これはある意味、仕方がない面はあると思う。人間の緊張は、そうそう続くものではない。日本より格段にコロナ禍の状況が厳しかった欧州では、都市封鎖や外出制限など、日本よりずっとずっと厳しい毎日を強いられた。この閉塞感と圧迫感は、そこまでのひどさを経験しなかった日本ではわからないかもしれない。

筆者のフランス人の友人達も、ブダペストにフランスチームのサッカー観戦に行こうと盛り上がっている。100%収容のスタジアムを目指して行こうとするあたり、さすがに情報に通じている。

ため息はつくが、責める事はできない。そういう筆者も、6月に入ってフランスで予定通り段階的な解除が進むなかで、突然、原因不明の胃痛に数日間襲われた。あれは体の緊張が解けた合図だったのだと思う。

そしてみんな「また秋から、厳しい制限措置が始まるかもしれない」という恐れはもっているに違いない。たとえそうなっても、一時でもいいから解放されたいのだ。

選手のストレスと孤独

とはいっても、選手は厳しい管理とストレスの中にいるままである。

欧州サッカー連盟の指示に従い、24チームは2週間前に準備を開始してから大会終了まで、健康管理の中に閉ざされている。

プロフィール

今井佐緒里

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出合い、EUが変えゆく世界、平等と自由。社会・文化・国際関係等を中心に執筆。ソルボンヌ大学(Paris 3)大学院国際関係・ヨーロッパ研究学院修士号取得。日本EU学会、日仏政治学会会員。編著に「ニッポンの評判 世界17カ国最新レポート」(新潮社)、欧州の章編著に「世界が感嘆する日本人~海外メディアが報じた大震災後のニッポン」「世界で広がる脱原発」(宝島社)、連載「マリアンヌ時評」(フランス・ニュースダイジェスト)等。フランス政府組織で通訳。早稲田大学哲学科卒。出版社の編集者出身。 仏英語翻訳。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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