コラム

コロナ禍の中で始まった欧州サッカー選手権、コロナ対策はオリンピックとどう違う?

2021年06月15日(火)13時34分

それ以外はだいたい4分の1程度で、ロンドンで最低25%の収容率、ミュンヘンで22%だという。

当初開催予定だったスペインのバスク地方のビルバオは、最低で25%の観客を保証しなかったため、セビリアに変更された。同じ理由で、アイルランド・ダブリンでの開催は見送られた(無観客を視野に入れていた)。

そのため、当初の予定だった12カ国開催はあきらめ、11カ国開催となった。これらは最終的にはすべて、欧州サッカー連盟の決断である。

この部分は、もし東京でオリンピックが行われるのなら、にらんで観察したい部分になるかもしれない。

テレビを見ている限りでは、スタジアムの観客が一人ずつ距離をあけてとっているとは言い難い。数人のグループで来ている人たちは、密着して応援している(そしてテレビがまた、そういう人達ばかりを映すのだ。絵になるからだろう)。

よく観察してみたら、距離の厳格さにお国柄が現れるかもしれない。

誰が観戦に行けるのか

それでは、どのような人たちが観戦に行けるのだろうか。

各国(各都市)でそれぞれの対策をとっている。

いくつかの都市では、国内、特に外国からの観戦者には、3つのうち最低1つの証明書の提示が必要だ。ワクチンの完全接種の証明書、過去の感染証明書、あるいは72時間以内のPCR/抗原検査による陰性証明書である。

アムステルダムでは、ワクチンの完全接種の証明書だけでは不十分で、さらに陰性証明書が必要となる。ブダペストでは、入場で体温検査をし、37.8度以上の者は入場が拒否される(注! 白人の平熱は、一般の日本人よりも高い)。

ミュンヘンでは、観客はFFP2のマスクを着用しなければならない(FFP2とは、欧州EN規格で、94%以上の捕集効率という意味)。

また、そもそも移動・旅行ができるのかという問題は、開催国の政策ごとに異なる。入国後に何日かの検疫&隔離が必要な国々では、行くのは難しいだろう。

そのほかにも、欧州サッカー連盟は、数々の「勅書」を出している。

通常は1チーム23人の選手が登録されるが、今回は26人まで許された。

また、大会開催中に感染が拡大した場合のことも考えている。

ゴールキーパーを含む健康な13名以上の選手がいれば、プレーすることができる。もしそれができない場合、試合は最大で48時間延期される。

そして、延期しても試合が開催できない場合、当該チームは3対0のスコアで負けとなる。このような規則は、欧州選手権史上初のことである。

これはもし東京オリンピックが開かれるのなら、集団競技には参考になるかもしれない。でも個人競技には、参考にならない。

プロフィール

今井佐緒里

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出合い、EUが変えゆく世界、平等と自由。社会・文化・国際関係等を中心に執筆。ソルボンヌ大学(Paris 3)大学院国際関係・ヨーロッパ研究学院修士号取得。日本EU学会、日仏政治学会会員。編著に「ニッポンの評判 世界17カ国最新レポート」(新潮社)、欧州の章編著に「世界が感嘆する日本人~海外メディアが報じた大震災後のニッポン」「世界で広がる脱原発」(宝島社)、連載「マリアンヌ時評」(フランス・ニュースダイジェスト)等。フランス政府組織で通訳。早稲田大学哲学科卒。出版社の編集者出身。 仏英語翻訳。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

G7外相、イスラエルとイランの対立拡大回避に努力=

ワールド

G7外相、ロシア凍結資産活用へ検討継続 ウクライナ

ビジネス

日銀4月会合、物価見通し引き上げへ 政策金利は据え

ワールド

アラスカでの石油・ガス開発、バイデン政権が制限 地
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 10

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story