コラム

投資も消費もせずお金を貯め込む日本は「教育失敗国」

2021年03月26日(金)11時40分

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「お金のまなびば!」より

日本と中国の決定的な差は「未来に対する挑戦心」

藤野氏は、日本人が投資をしない理由のひとつは、「教育の失敗」にあると指摘する。

「教育で一番大事なことは、未来を自分たちでつくること、明るい未来が自分たちの前にあると信じること。しかし現実は逆で、小学生から大学生まで、学年が上がるほど未来に対する悲観度は増していく。未来に対して暗い気持ちになる子供が増えるのは、教育の失敗と言わざるを得ない」
 
藤野氏は、「投資とは未来をつくること」と語る。未来は明るいと信じていれば投資をして世の中が回る。反対に、お先真っ暗だと思っていたら投資はできない。結果、世の中は動かず、結果的に心も暗くなるという負のスパイラルに陥る。

国の経済力の目安としてよく用いられる指標にGDP(国内総生産)がある。中国のGDPが日本を抜いたのは2010年のこと。それから10年後の2020年、日本と中国の差は約3倍にも開いた。

「この差は未来に対する確信の差、挑戦の差。資産の全てを消費や投資に使う必要はないが、全員が貯め込んだら世の中は回らない」

日本銀行の調査によると、日本は個人金融資産のうち、約1000兆円もの現金・預金を保有している。藤野氏によると、そのうち10%を投資に回すだけで日本は激変する。未来に投資するお金が100兆円ともなれば、さまざまなチャンスを活かすことができるからだ。

「投資は始めることが重要で、最初は"ドキドキしない程度"の金額で十分。投資によって気持ちが不安定になったり、振り回されたりしたら元も子もない。少ない金額でもいいから、一歩踏み出すことが大事」

特に若い世代にとって、「時間」は強力な味方だ。「現金主義」を卒業することで、希望に満ちた未来を切り開ける可能性がある。

構成・酒井理恵

●YouTubeチャンネル「お金のまなびば!」
https://www.youtube.com/channel/UCVx4SuP1joFQXoqK5JFUmsg

プロフィール

藤野英人

レオス・キャピタルワークス 代表取締役会長兼社長、CIO(最高投資責任者)
1966年富山県生まれ。国内・外資大手資産運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年にレオス・キャピタルワークスを創業。日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ投信」シリーズを運用。投資啓発活動にも注力しており、東京理科大学MOT上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師、日本取引所グループ(JPX)アカデミーフェロー、一般社団法人投資信託協会理事を務める。主な著書に『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)、『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)、『さらば、GG資本主義――投資家が日本の未来を信じている理由』(光文社新書)など。

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