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インタビュー:29日のドル/円急落、為替介入した可能性高い=古沢元財務官

2024年04月30日(火)20時41分

 元財務官の古沢満宏・三井住友銀行国際金融研究所理事長は30日午前、ロイターとのインタビューで、29日の外為市場でドル/円が急落した動きについて「(政府・日銀が)為替介入した可能性が高い」との見方を示した。写真は2017年、横浜市で撮影(2024年 ロイター/Issei Kato)

Kentaro Sugiyama Tetsushi Kajimoto

[東京 30日 ロイター] - 元財務官の古沢満宏・三井住友銀行国際金融研究所理事長は30日、ロイターとのインタビューで、29日の外為市場でドル/円が急落した動きについて「(政府・日銀が)為替介入した可能性が高い」との見方を示した。過度な変動と無秩序な動きによる悪影響を防ぐために行われたものであり、日本の通貨当局の行動に諸外国からそれほど批判は出てこないのではないかと述べた。

30日午前にインタビューに応じた古沢氏は、ドル/円が150円台に上昇しその後も騰勢を強める中、「(通貨当局が)いつ介入を実施してもおかしくはない状況ではあった」と指摘。29日にドルが158円付近から160円台まで急速に上昇したことから、当局も機会を逃さずに対応したとの見方を示した。

インタビュー後の30日夕に日銀が公表した1日の当座預金予想は民間短資会社の予測から5兆円以上乖離(かいり)しており、政府・日銀が29日に同規模の円買い介入をしたことを示唆している。

各国政府による為替介入を巡っては、イエレン米財務長官が「まれな状況でのみ容認される」との認識を示していた。古沢氏は、日本が今月17日の日米韓財務相会合や主要7カ国(G7)財務相・中銀総裁会議などで国際的な地ならしを進めてきたと指摘。介入が実施されたとしても米国と協議した上で行われたものであり、「米国が反対する中でやったとはとても思えない」と語った。

為替介入が2022年9月から10月にかけて3回行われた際、2回目と3回目は実施を直後には公表しない「覆面介入」だった。今回も財務省は介入の実施を明らかにしておらず、古沢氏は、日本の当局者が投機筋を疑心暗鬼にすることで介入の効果を高めようとしているとの見方を示した。

<日銀追加利上げ、「6・7月でもおかしくはない」>

日銀が3月の金融政策決定会合で大規模緩和を修正したことについては「妥当だった」と評価。そこに至るまでにイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)を実質的に形骸化させるなど、日銀の取り組みもうまかったと指摘した。

日銀の追加利上げのタイミングについては「データディペンデント(データ次第)というのが原則」としつつも、6月の定額減税や今春闘の強い結果を鑑みると「個人的には9月まで引っ張るのかなという気はする。6月、7月というのもそれほどおかしなタイミングではない」と述べた。

岸田文雄首相が衆議院の解散総選挙に踏み切るか関心が高まる中、この先の政治日程が日銀の金融政策変更に与える影響については「政治的な状況を全く度外視することはできないが、あくまでも経済の状況をみながらというのが原則」と説明。政治の状況を考慮の対象に入れるなら「金融政策のタイミングも非常に難しいことになる」との見方を示した。

ロイター
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