最新記事
産業

世界に不可欠な存在となった台湾の「半導体」産業...「中国リスク」の高まりで、どんな影響が?

CRUCIAL TECH PARTNER

2024年1月19日(金)17時47分
マーシー・クオ(ディプロマット誌コラムニスト)

──半導体産業での台湾の役割を脅かす主なリスクは?

半導体供給網にとってのリスクは人材不足や知的財産・企業秘密の盗用、天災、原材料・装置不足、需給の不均衡だ。台湾の場合、現在進行形の人材不足、悪天候や地震によるインフラ・設備の破損が大きなリスクに挙げられる。部分的な混乱が起きる可能性は高いが、影響は短期的で、深刻度もより低いだろう。

さらに、そこまで現実的ではないものの、中国の攻撃的行動が危機を招く2つのシナリオが想定できる。中国が経済封鎖で物品・サービス貿易を制限しようとした場合、台湾の半導体産業は重大かつ中期的な混乱に陥りかねない。

中台戦争が勃発すれば、大きな混乱が1年以上続くだろう。とはいえ、中国による侵攻が台湾の半導体業界に与えるダメージや、戦争長期化の影響をめぐっては見解が一致しない。台湾の半導体生産に中国経済も大きく依存している現状では、近い将来に侵攻があるかどうかも疑問だ。

──企業は混乱に備えているか。

半導体製造、なかでもファウンドリ企業は地理的な多様化を図っている。TSMCが米アリゾナ州で建設中の新工場がいい例だ。

台湾の半導体企業は既に大規模な防災投資を行い、水循環の強化や電力アクセス確保を進めている。人材確保を狙って、政府と企業が大学の教育プログラムに資金提供も行う。リスク管理チームを設立し、サプライチェーンの多様化や強化にも努めている。多くの半導体企業にとって、今やレジリエンス(回復力)構築が最重要課題だ。

──国際的な半導体エコシステムを地政学的リスクから守る、台湾政府の取り組みの効果は?

基幹産業である半導体業界が「空洞化」する可能性と、国際エコシステムのチームプレーヤーという位置付けの間で、台湾はバランスを取らなければならない。台湾はアメリカ主導の各種措置を支持してきた。中国の華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)への製品供給制限を遵守し、米韓日台の半導体供給網構想「チップ4同盟」に中核メンバーとして参加している。

台湾は一貫してアメリカや同盟国と手を組み、中国に対抗しようとしている。花形産業がむしばまれかねないとの懸念が足元にあるが、問題解決の一助になることを望んでいる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、日米欧台の工業用樹脂に反ダンピング調査 最大

ワールド

スロバキア首相銃撃事件、内相が単独犯行でない可能性

ビジネス

独メルセデス、米アラバマ州工場の労働者が労組結成を

ビジネス

中国人民元建て債、4月も海外勢保有拡大 国債は減少
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 7

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 8

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 9

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中