最新記事
ロシア

経済制裁にあえぐロシア、航空機トラブルが一年で3倍に──整備不良もお構いなしに飛び続ける

Russian plane malfunctions tripled in just one year as sanctions bite

2023年12月12日(火)17時01分
イザベル・ファン・ブリューゲン、エフゲニー・ククリチェフ

航空産業を維持するために、ロシアはそのほかの制裁を迂回し、欧米製の交換部品や機材の代替品を調達する方法も模索している。

ロシアのビタリー・サベリエフ運輸相によれば、ロシアは2022年2月以降、欧米の制裁措置により旅客機76機を失ったという。

12月も、最初の8日間で早くも8件の航空機トラブルが報告されている。12月8日には、ロシア南部シベリアのノボシビルスクでボーイング737型機がエンジントラブルのため緊急着陸した。ロシアのテレグラムチャンネル「Baza」は、乗客・乗員あわせて176人に怪我はなかったと報告している。


この前日にはロシア連邦を構成するブリャート共和国の首都ウラン・ウデから離陸したロシア機のエンジンが火を噴く事故が発生。ブリャート共和国のアレクセイ・ツィデノフ首長は、中国・福建省の章州に向かっていたツボレフTU204貨物機について、自身のテレグラムチャンネルで「その後着陸し、怪我人はなかった」と述べた。

ツィデノフによれば、ロシアの航空会社「アビアスタル-TU」が保有する同貨物機は、ウラン・ウデにあるバイカル国際空港から離陸した際にエンジンから出火した。同機は安全に着陸し、乗員5人に怪我はなかったということだ。

保守点検用資材が調達できない

6日にはロシア西部のカザン発モスクワ行きの旅客機がエンジンの故障によりモスクワのシェレメチェボ空港に緊急着陸。1日と2日には、メンテナンスの不備から航空機5機が故障した。

ロシア乗客連合のキリル・ヤンコフ代表は、ロシアのウェブサイト「74.RU」に対して、民間航空機のトラブルが増えている背景には、交換部品の不足と保守点検の問題があると述べた。

ヤンコフは「以前と比べて、多くの航空機の交換部品や保守点検用資材を入手するのが困難になっている。そのため、メーカーの認定を受けていない交換部品が一部の航空機に使われ始めている」と述べた。「航空機の墜落事例はまだ増えていない。だが犠牲者を出さない事故の数は顕著に増えている」

欧米の制裁のせいで空の旅の安全性が脅かされている、とヤンコフは言った。

20240514issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月14日号(5月8日発売)は「岸田のホンネ」特集。金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口……岸田文雄首相が本誌単独取材で語った「転換点の日本」

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

USスチールは米にとどまるべき、バイデン氏の方針変

ビジネス

インフレ鎮静化は進行中、「相当な」不確実性ある=S

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、米指標が労働市場減速を示唆

ビジネス

米国株式市場=ダウ7日続伸、米指標受け利下げ観測高
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 2

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽しく疲れをとる方法

  • 3

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 4

    上半身裸の女性バックダンサーと「がっつりキス」...…

  • 5

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 6

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    自民党の裏金問題に踏み込めないのも納得...日本が「…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中