最新記事

英王室

ヘンリー王子のバルコニー不在が物語る、断絶と不安な将来

Prince Harry Balcony Absence Reveals Stark Reality About His Future

2023年5月8日(月)17時00分
ジャック・ロイストン

女王の葬儀では、アフガニスタンの最前線に2度派遣されたヘンリーが、軍服を着用する権利があるかどうかが議論され、ヘンリーへの同情が再び高まった。辛口コメンテーターでヘンリーを熱心に批判しているピアーズ・モーガンでさえ、この問題ではヘンリーを擁護した。

全体として、英王室による扱いの変化は、ヘンリーとメーガンにとって、ネットフリックスとスポティファイと結んだ契約を、王室暴露をしない形で果たすという圧力が加わったことを意味する。

ヘンリーが急いで空港に駆け込んだのは、アーチーの誕生日に間に合うように家に帰るため、と受け取られている。だが、興味深いことに、アーチーはまだ4歳。自分の誕生日がどの日に当たるのか、具体的な感覚を持っているとは思えない。

したがって、ヘンリーとメーガンが1日、あるいは1週間遅れて誕生日を祝ったとしても、アーチーは何も気にしないだろう。70年ぶりの戴冠式よりもはるかに重要でも歴史的でない状況で、多くの親が使う手だ。

1月に行われたイギリスのテレビネットワークITVのインタビューのなかで、ヘンリーは「自分はまだ王制を信じている」と述べたが、これは非常に混乱を招く発言だ。

切れたつながり

ヘンリーの公的声明がどうあろうと、ヘンリーのイギリス滞在が極めて短い事実は、エリザベス2世も亡くなった今、ヘンリーと王室を結びつけるものはほとんどなくなったことを表している。

ダイアナ妃は王室の廷臣を自分の自由を奪う「灰色の男たち」と見なしていたが、ヘンリーもその見解に同調しているようだ。

そのため、ヘンリーとチャールズ国王との関係は緊張をはらんでおり、次期国王との関係は事実上存在しない。そして一部例外を除いて、ヘンリーは数十年前から王室の廷臣についてかなり否定的な見方をしているようだ。

ヘンリーはITVの独占インタビューで、王制を信じていると語ったが、「王室」と呼ぶものを繰り返し非難するばかりで、王制に対する具体的な熱意は表明していない。

ヘンリー夫妻の広報担当者は最近、メーガンが戴冠式を欠席した理由を、「現在の生活に集中しているから」と説明した。こうしてみると。メーガンのほうが王室との関係において、より未来志向になっているようだ。

一方、ヘンリーはタブロイド紙を訴えた裁判の関係で4月にロンドンの高等法院に1万7000語近い証人陳述書を提出したが、そのなかで世間の注目を集め、家族を動揺させかねないさらなる秘密の暴露を行った。この裁判でヘンリーは、1990年代以来の長年にわたる電話の盗聴に基づくプライバシー侵害を訴えている。

つまり、ヘンリーがカリフォルニアに戻ったのは、息子の誕生祝いや温かい家庭生活だけなく、メーガンが生きる現在を共にする必要があったからだ。それは、ヘンリーが急いで捨て去った王室の魅力を利用することなしに、未来を商業的に成功させるという挑戦でもある。


20240521issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月21日号(5月14日発売)は「インドのヒント」特集。[モディ首相独占取材]矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディの言葉にあり

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 4

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 5

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 9

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中