最新記事

ウクライナ

プーチンと戦うもうひとつの手段 ......ノルウェーの「空飛ぶ病院」がウクライナの負傷兵を救護!

2023年4月27日(木)18時41分
青葉やまと

砲弾受け、右目と鼻が裂かれた重傷の兵士

ノルウェー以外ではフランスも、航空医療搬送機をウクライナに派遣している国のひとつだ。英スカイニュースは、この輸送により一命を取り留めた元兵士のケースを報じている。

ウクライナ軍の第808支援連隊に所属していた30歳男性のマクス・ホロベツ大尉は、ロシアによる侵攻を受けた直後の昨年3月、南部ザポリージャに配置されていた。攻撃を受けて橋が損傷し、これによって橋に沿って走っていた通信網が遮断されたため、状況を確認すべく兵士2人とともに現地へ急行したという。

ところが、ホロベツ氏たちはロシア軍に発見され、砲撃を受けてしまう。砲弾の破片が顔面を直撃し、氏は重傷を負った。スカイニュースに対し、「(砲撃が)止むのを待って帰還しようとしたその瞬間、いくつもの砲弾が飛んできたんです。すぐにしゃがみ込んで顔を向けたところ、(破片を)頭部に食らいました」と負傷の瞬間を語る。

フランスから救護に飛んだ医療搬送機

ホロベツ氏は右目の周囲一帯と鼻の一部が裂かれる重傷を負い、顎の骨と頭蓋骨の右側も大きく砕かれた。ザポリージャなどウクライナ国内の外科医が処置を施したが、十分ではなかったようだ。戦禍のウクライナの医療施設では対応できない高度で長期にわたる医療が必要だった、とスカイニュースは指摘している。

やっとのことでアイルランドの首都ダブリンに病床の空きが見つかり、フランスから航空医療搬送ジェットが飛んだ。「すべてがとても迅速でした」とホロベツ氏は振り返る。氏にとってアイルランドが、初めての海外となった。

アイルランド国内でも病床が逼迫していたことなどで、治療には時間を要したようだ。だが、より専門的な手当を受けることができた。右目や鼻の周りはあちこちが痛々しく縫合されていたが、いまではすっかり元通りとなり、傷跡はまったくと言えるほど目立たない。

「顔を取り戻せるよう力になると、皆が言ってくれたんです」「元通りになって、みんなで喜んでくれました」とホロベツ氏は語る。

ウクライナでは、多くの医療機関が被害に遭っており、物資も不足している。EU域内などでの治療を可能にする航空医療搬送機は、負傷者の生命線となっているようだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ南部、医療機関向け燃料あと3日で枯渇 WHOが

ワールド

米、対イスラエル弾薬供給一時停止 ラファ侵攻計画踏

ビジネス

米経済の減速必要、インフレ率2%回帰に向け=ボスト

ワールド

中国国家主席、セルビアと「共通の未来」 東欧と関係
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    習近平が5年ぶり欧州訪問も「地政学的な緊張」は増すばかり

  • 4

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 7

    迫り来る「巨大竜巻」から逃げる家族が奇跡的に救出…

  • 8

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中