最新記事

南シナ海

中国、南シナ海でフィリピン沿岸警備隊艦船にレーザー照射 EEZ内に侵入して妨害行為

2023年2月14日(火)18時15分
大塚智彦

今回のレーザー照射は2回に渡って行われ、「マラパスクア」の艦橋にいた乗員の目に一時的な障害を生じさせたと比沿岸警備隊はしている。

レーザーを照射したのは中国海警局の船舶「5205」で同船は2月6日に比のEEZ内に侵入したことが確認されていた。

「5205」は「マラパスクア」から距離して約7.4キロ離れた海上からレーザーを2回照射し、その後「マラパスクア」の右舷後方約130メートルまで接近して危険な操船で妨害行動に出たため「マラパスクア」は進路変更を余儀なくされたとしている。

中国はフィリピンを批判

フィリピン大学の海事法専門家ジェイ・バトンバカル氏はメディアに対して「レーザー照射は国連憲章にも違反する武力行使または侵略行為の脅威とみなすことができる。フィリピンはそうした攻撃的な行為から自国の船舶、航空機を保護するための行動をとる権利がある」と中国を非難するとともに、比政府に対してもこれまで以上の強い姿勢を示す必要性を明らかにしている。

これに対し中国は2月13日外務省の王文斌副報道局長が定例会見で「現場での中国の行動は抑制的だった。フィリピンは南シナ海での中国の海洋権益を尊重するべきである。今回の事案は比艦船が中国の領海に侵入したことが原因だ」と主張してフィリピンを批判した。

中国海警局船舶による今回の比沿岸警備隊船舶へのレーザー照射は南シナ海での緊張をさらに高め、中国による一方的な「妨害行為」や「実力行使」が今後も増加、拡大していく懸念もある。そのため領有権問題を抱える周辺国、また中国が一方的主張する海洋権益を断固として認めない米国などによる警戒監視が強化されることが確実視されている。

otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

=>>中国海警局「5205」によるレーザー照射の映像はこちら

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 9

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中