最新記事

W杯

【W杯】イラン国民が米国勝利を祝う皮肉、「体制の犬」にされた選手の悲劇

Videos Show Iranians Celebrating U.S. Win in World Cup

2022年11月30日(水)19時06分
アンドリュー・スタントン

コラムニストのボビー・ゴーシュは、MSNBCに出演した際、こうした動画はイランの政治指導者に対する不満が高まっていることを示していると述べた。イランに対しては、その抑圧的な法律と人権侵害、特に女性やLGBTQコミュニティの迫害の疑いで、以前から監視の目が向けられている。

「驚いたことに、イラン人がアメリカの勝利を祝っているというイラン発の報道を目にしている」と、彼は言う。「自分が生きている間にこんな光景を見るとは、万に一つも思っていなかった。これは、イラン国民が現政権を嫌っていることを物語っている。そして、その政権を代表するサッカー代表も憎んでいる」。

イランチームの敗北を祝うこの反応は、イランの指導者に対する不満の高まりを示す最新の兆候だ。デモ参加者のうち少なくとも21人が死刑になりかねないこともあり、怒りはイラン体制を代表するチームにも向けられた。

イラン代表も勇気を見せた。イングランドと戦った最初の試合の前に国歌斉唱を拒み、沈黙を貫いたのだ。全世界に中継されるのも覚悟の上の勇気ある行動で、帰国後は刑務所行きか死刑、とも噂されている。

イラン代表の2022年ワールドカップ出場の意義は、自国の政治的分断で台無しになっている。観覧席に、イラン政府に抗議するための物品を持ち込み、大会関係者に取り上げられたサッカーファンもいた。

大会の序盤には、イラン人ファンの一部が自国の国歌にブーイングを浴びせた。また、イングランドがイランを破った試合の後では、「独裁者に死を」と叫ぶテヘランの人々の動画が拡散され、敗北を祝福する声があがった。

イランにおける女性の権利擁護活動を監視する団体「ヒューマンライツ・アクティビスト・イン・イラン」は、デモを取り締まる治安部隊が少なくとも419人のデモ参加者を殺害したと報告している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中