最新記事

アフガニスタン

最大1万人が参戦!? あの国の元特殊部隊隊員たちがロシアの戦力に

Recruiting Afghans

2022年10月31日(月)21時05分
リン・オドネル(フォーリン・ポリシー誌コラムニスト)

アメリカは責任を放棄

一部の元隊員はメッセージアプリのワッツアップやシグナルで接触を受け、ロシアの「外国人部隊」に勧誘されている。最大1万人が誘いに乗りかねないとして、アフガニスタンの元軍隊・治安関係者はこうした動きを懸念する。

「彼らは国も職業もなくした。もう失うものは何もない」と、ある情報提供者は言う。

「パキスタンやイランで日給3~4ドルの仕事、あるいはトルコで日給10ドルの職にもありつけない彼らが再び兵士になり、報酬1000ドルを手にする機会を拒むはずがない。元隊員たちは兄弟同然だから、1人を採用できたら、かつての所属部隊の仲間の半数が後に続く。小隊規模の人員を集めるのに時間はかからない」

今年2月のロシアによる侵攻で、国際社会の注目がウクライナに転じて以来、アフガニスタンの元特殊部隊員は見捨てられている。アメリカや同盟国はタリバンの復讐から逃れる手助けをするどころか、責任放棄状態だ。

マイケル・マコール米下院議員は、昨年のアフガニスタン撤退に関する報告書で、元特殊部隊員はアメリカの敵対国による勧誘の標的になりかねないと警告している。

過激派組織「イスラム国」(IS)傘下のグループ「ISホラサン州(IS-K)」などの「国際テロ組織や中国、ロシア、イランといった敵対国に協力を強要されたり、誘い込まれたりすれば、アメリカの国家安全保障のリスクになる可能性がある」

アフガニスタンの元特殊部隊員を含む対米協力者について、マコールはそう指摘している。

アフガニスタン国内で潜伏する35歳の元特殊部隊大尉は、イランの首都テヘランにある勧誘拠点とコンタクトを取りたいという大勢の元同僚に力を貸したと証言する。

彼らはアフガニスタンからイラン経由でロシアへ空路で移動するという。その先のことは不明だ。「ロシアの誘いを受け入れた元隊員の携帯電話は電源がオフになる。全てが極秘態勢で行われている」

元大尉やかつての軍隊仲間は、アフガニスタンやイランで極めて厳しい生活を送る。

「とても失望している。アメリカ人やイギリス人、ノルウェー人の軍事顧問と一緒に18年間、危険な任務を遂行してきた。今では隠れて暮らし、1秒ごとに苦しい思いをしている」と、元大尉は話す。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中