最新記事

経済制裁

西側の制裁逃れるロシアの富裕層 今もトルコやUAEで不動産買いあさる

2022年3月31日(木)17時34分

モスクワとベルリンを拠点とする不動産仲介会社、トラニオのエレナ・ミリシェンコワ氏は「投資家は資本の保護と、UAEに一時的に身を移すための居住ビザ取得の機会の両方を手に入れたがっている」と述べた。同社はロシア人顧客による海外での不動産購入に力を入れている。 同社が今年1─3月に受けた集合住宅への引き合いは前年同期の3倍ほどに急増した。

需要がもっと増えている企業もある。

ドバイのモダン・リビングのカルダス氏は「ウクライナ侵攻が始まった直後、この地域で販売キャンペーンを展開したところ、問い合わせ数が少なくとも通常の10倍に上った」と語り、本当に裕福な買い手はウクライナとの戦争が起きる前から準備を進め、ロシアから資金をシフトしていたようだとの見方を示した。

現金から暗号通貨へ

UAEに拠点を置く不動産会社、ロイヤル・ホーム・リアル・エステートのエレナ・ティムシェンコ氏に話を聞く限り、ドバイに銀行口座を持つロシア人にとって、手続きは比較的容易だ。一方で、友人に頼ったり、助けを求める人もいるが、購入資金を集めるのに苦労する人もいるという。

「ドバイで不動産を買いたいと望むことと、実際に購入するのはまったく別物だ」と、購入資金の調達の難しさを指摘する。

トルコに新たに入国したロシア人の中には、制裁に抵触することを警戒する銀行で、預金や送金に難渋する人もいる。さらにビザやマスターカードなどクレジットカード会社の法令順守やロシアでの決済事情停止が困難に拍車をかけている。

UAEは昨年、不正な資金の流れを阻止するため、銀行に対して疑わしい取引の特定の手続きを厳格化する指針を発表した。しかし、トルコと同様に、国際組織「金融活動作業部会(FATF)」の監視対象国リストへの追加を阻止できなかった。

UAEのある銀行幹部は、銀行の顧客チェック体制は以前と変わらず、中銀から新たな指導は受けていないと説明している。

イスタンブールのババカン氏によると、これまでのところ取引のあるロシア人顧客は、問題なく銀行経由で支払いができていると話した。

イスタンブールの不動産業者、アレックス・チハノグル氏は、制裁によって金融取引がより難しくなった今、一部のロシア人は現金から暗号通貨に換えて決済しており「目にする取引のほとんどは、暗号通貨で行われている」と明かした。

(Ceyda Caglayan記者、 Saeed Azhar記者、Riham Alkousaa記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・ロシア戦車を破壊したウクライナ軍のトルコ製ドローンの映像が話題に
・「ロシア人よ、地獄へようこそ」ウクライナ市民のレジスタンスが始まった
・【まんがで分かる】プーチン最強伝説の嘘とホント
・【映像】ロシア軍戦車、民間人のクルマに砲撃 老夫婦が犠牲に


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:米証券決済、「T+1」移行でMSCI入れ

ビジネス

米国株式市場=小幅高、エヌビディア決算前に様子見も

ビジネス

NY外為市場=ドル小幅高、金利の動向見極める動き続

ワールド

バイデン氏の5月支持率、約2年ぶり低水準 経済問題
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    9年前と今で何も変わらない...ゼンデイヤの「卒アル写真」が拡散、高校生ばなれした「美しさ」だと話題に

  • 4

    「目を閉じれば雨の音...」テントにたかる「害虫」の…

  • 5

    服着てる? ブルックス・ネイダーの「ほぼ丸見え」ネ…

  • 6

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 7

    高速鉄道熱に沸くアメリカ、先行する中国を追う──新…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    「韓国は詐欺大国」の事情とは

  • 10

    中国・ロシアのスパイとして法廷に立つ「愛国者」──…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 10

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中