最新記事

スパイ疑惑

TikTokはアメリカの敵なのか──制裁に二の足を踏むバイデン政権

TikTok Denies Sharing User Information With China Amid Concerns About Safety of U.S. Data

2021年10月27日(水)18時27分
アレックス・ルーハンデ
TikTokロゴと星条旗

TikTokはアメリカにおける中国のスパイか? Dado Ruvic/Illustration -REUTERS

<中国政府に情報を送っているとの疑いから、すでに米軍では全面使用禁止になっている動画投稿アプリTikTokの米州責任者が、上院公聴会に出席>

10月26日に開かれた米上院委員会の公聴会に「TikTok(ティックトック)」幹部が出席し、証言を行ったとロイターが報じている。親会社の字節跳動科技(バイトダンス)が北京を本拠とする中国企業のため、安全保障上の脅威と疑われ、米軍によるTikTokの使用は既に全面的に禁じられている。だが米国事業を担当するこの幹部は、個人情報を中国政府に提供している事実はないと証言したほか、米国人がそうした潜在的リスクにさらされるのを防ぐための対策もとっている、と述べた。

10月26日の公聴会を実施した上院商業委員会の小委員会メンバーである共和党のマーシャ・ブラックバーン上院議員は、TikTokの米州公共政策責任者を務めるマイケル・ベッカーマンに対し、中国政府から要求された場合、同社は個人情報の提供を断わることができるのかと質問した。

「当社は、中国政府と情報を共有していない」とベッカーマンは答えたとロイターは伝えている。「当社では、米国を拠点とする世界的に有名なセキュリティチームが、情報アクセスの監視を行なっている」

中国国有企業の役員がいる?

中国の億万長者、張一鳴(チャン・イーミン)が創業したバイトダンスは、TikTokのほか、中国版TikTok「抖音(ドウイン)」を所有している。多くの未公開株ファンドが出資しているだけでなく、中国国有企業がバイトダンス株の1%を購入し、取締役を送り込んでいると報道されて以来、中国政府からの独立性が疑問視されていると、ニュースサイト「ザ・インフォメーション」は伝える。

国有企業が取締役を送り込んでいる件についてブラックバーンから問いつめられたベッカーマンは、ザ・インフォメーションの報道を否定した。すべての米国ユーザーの個人情報は米国で保存され、データのバックアップはシンガポールに保管されていると述べた。

共和党のジョン・スーン上院議員は別のアプローチで質問を行った。TikTokのアルゴリズムに対する懸念を表明したとロイターは伝えている。TikTokのアルゴリズムは、ユーザーの嗜好をたちまち学習し、ほかの動画を勧めることで知られている。ベッカーマンはそれに対し、同社アプリが収集する個人情報の量は、業界の同業者よりも少ないことが外部の調査により判明している、と答えた。
ドナルド・トランプ前大統領は任期の終盤、バイトダンスに対して大統領命令を出し、TikTokの過半数株を売却させようとした。買い手の候補としてはオラクルとウォルマートが挙がっていたが、バイトダンスは訴訟により、売却を阻止することに成功した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EXCLUSIVE-チャットGPTなどAIの基盤モ

ワールド

米がイスラエルに供給した爆弾、ガザ市民殺害に使われ

ビジネス

英アーム、通期売上高見通しが予想下回る 株価急落

ビジネス

PIMCO、金融緩和効果期待できる米国外の先進国債
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    習近平が5年ぶり欧州訪問も「地政学的な緊張」は増すばかり

  • 4

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 7

    迫り来る「巨大竜巻」から逃げる家族が奇跡的に救出…

  • 8

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中