最新記事

バイデン政権

「パンデミックは未接種者によるもの」、ワクチン義務化に舵を切ったバイデン政権

Biden Does U-Turn on Vaccine Mandates

2021年9月10日(金)18時13分
ダニエル・ビラリアル
バイデン米大統領

KEVIN LAMARQUE-REUTERS

<ワクチン接種の「義務化」に舵を切った米バイデン政権だが、共和党からは早くも「憲法違反」との声が上がっている>

ジョー・バイデン米大統領は、独立記念日の2021年7月4日、国民に対して、新型コロナウイルスから独立する日は近いと呼びかけた。しかし、それから2カ月後の9月9日、バイデン政権はワクチン接種の「義務化」を否定するこれまでの方針を180度転換した。急増する感染率と入院者数に対応するためだ。

バイデンはすべての連邦政府職員に向けて、今後数カ月以内のワクチン接種を義務付ける命令を発出し、従わない場合は職を失う可能性もあるとした。バイデン政権はまた、連邦政府と取引のある業者にも、従業員のワクチン接種を義務付けるとした。AP通信によれば、この義務化によって約1億人が影響を受けることになるという。

政権は今回の発表で、従来の方針を完全に覆したことになる。ホワイトハウス報道官ジェン・サキは7月23日、連邦政府が介入してワクチン接種を義務化すべきかどうかたずねられた際、そういったことを義務化するのは「連邦政府の役目ではない」と述べていた。

「私の考えでは、ここでの問題はまず、(ワクチン義務化は)連邦政府の役目ではないということだ。義務化の役目を担うのは組織や民間企業などではないかと思う」とサキは述べている。「それこそが妥当なやり方だ。さらに地域社会も、住民を守るために必要な措置を取ることになる」

バイデンは7月4日、「アメリカの独立記念日と、コロナからの独立を祝う」演説を行っていた。サキは9月9日の記者会見で、7月の演説は「時期尚早だったのでは」という問いかけに反論し、ワクチン接種を受けていないアメリカ人が現状を引き起こしたのだと指摘した。

未接種者は8000万人近く

米疾病対策センター(CDC)のロシェル・ワレンスキー所長は7月30日、新型コロナウイルスのワクチン接種が全米規模で義務化されることはないだろうと述べていた。その際、全米の連邦政府職員、ならびに連邦政府と取引がある請負企業の従業員へのワクチン接種が義務化される可能性については言及しなかった。

バイデンは、9月9日の演説で次のように述べた。「今回のパンデミックは、ワクチン未接種者によるものだ。(中略)アメリカには、まだワクチンを接種していない人が8000万人近くいる。さらに、選挙で選ばれた議員や知事などのなかには、新型コロナウイルス感染症と戦うための取り組みを台無しにする行動を積極的にとる者もいる」

「彼らは、ワクチン接種やマスクの着用を促す代わりに、新型コロナウイルス感染症で亡くなった地元のワクチン未接種者のために、移動式の遺体保管所を準備している」とバイデンは続けた。「こうしたことはまったく容認できない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

必要なら利上げも、インフレは今年改善なく=ボウマン

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中