最新記事

アフガン情勢

国外脱出のチャーター機をタリバンが足止め?──「事実上の人質状態」と米議員

Taliban Hold Planes Full of Evacuees as Congressman Talks of 'Hostages'

2021年9月6日(月)14時15分
ジェイソン・レモン
カブール国際航空

米軍撤退後のカブール国際空港(8月31日) REUTERS

<アメリカにタリバン政権を承認させるための人質、との見方もあるが、米国務省にも有効な手段なし>

アフガニスタンの実権を掌握したイスラム主義組織タリバンはここ数日、国外脱出を希望する人々を乗せた飛行機の離陸に待ったをかけているらしい。この状況について米政界では「人質を取られている」ようなものだとの声も上がっている。

AP通信は5日、北部マザリシャリフの空港で、少なくとも4機の航空機がはっきりしない理由で足止めされていると伝えた。アフガニスタンの当局者は、数百人の乗客は全てアフガニスタン人で、ビザがなかったりパスポートを持っていない人が多く含まれると述べたという。

だが米下院のマイケル・マコール議員(共和党)は5日、FOXニュースの番組に出演、足止めされている中には複数のアメリカ人が含まれていると主張した。

「実際のところ、人質を取られたような状況になりつつある。アメリカが(タリバン政権を)完全に承認するまで、アメリカ国民の出国を認めないというわけだ」と、下院外交委員会の共和党トップであるマコールは述べた。

マコールはまた、米軍のアフガニスタンからの完全撤退により数百人のアメリカ国民が「敵陣に取り残された」と述べるとともに、撤退を推し進めたジョー・バイデン大統領について「彼の手は血まみれだ」と非難した。

国務省もチャーター便の詳細つかめず

米国務省の報道官は本誌の取材に対し、チャーター機で国外脱出を図っているアメリカ人がいるのかどうかについては分かっていないと述べた。

「チャーター機などの出国経路を手配しようとしている多くの人々の懸念はわれわれも理解している。だが、現地にわれわれの要員はおらず、空輸のための施設等も押さえておらず、アフガニスタンであれ周辺地域であれ、空域も支配していない」と報道官は語った。

「こうした制約下で、われわれにはチャーター機に関し、手配をしたのが誰で、アメリカ人やそれ以外の優先的に避難が認められる人々が何人くらい乗っているのか、それ以外の乗客リストの正確性、どこに着陸する予定なのかといった、基本的な細かい情報を確認するための信頼に足る手段もない」と報道官は述べた。

国務省は、現地にいまも残るアメリカ人やアフガニスタンからの避難民を「助ける用意はある」としている。また、タリバンが急速にアフガニスタンにおける実権を取り戻して以降、数多くの人々を避難させたと強調した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

4月末国内公募投信残高は前月比0.1%減の226.

ビジネス

ゆうちょ銀、3月末の国債保有比率は18.9%

ビジネス

みずほFGの今期純利益見通し10%増の7500億円

ビジネス

中国の複数行、高金利預金商品を廃止 コスト削減狙う
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 8

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中