最新記事

後遺症

新型コロナに感染するとIQも下がる!?(英研究)

UK Study Links COVID With Drop in Reasoning Abilities, Problem Solving

2021年7月29日(木)14時21分
ダニエル・ビャレアル
脳イメージ

脳の画像検査などさらなる研究が待たれる Design Cells-iStock

<頭の副作用は「ブレインフォグ」だけじゃない。論理的思考や問題解決など高次の能力低下と感染歴に相関がみられた>

新型コロナウイルスに感染した人は、論理的思考能力や問題解決能力が低下する可能性がある――医学雑誌「ランセット」に、こんな研究報告が掲載された。

研究では、イギリスで行われた認知能力テスト「グレート・ブリテン・インテリジェンス・テスト(GBIT)」に参加した人々のデータを検証。まず、2020年1月から12月の間にGBITを受けた8万1337人のデータを基に、性別や民族、第一言語や居住国、職業的地位や収入別の平均スコアを算出。その後、その平均スコアと新型コロナウイルスの感染歴がある人とない人のスコアを比較検証した。受験者のうち、新型コロナウイルスの感染歴があると報告したのは1万2689人だった。

その結果、新型コロナウイルスの感染歴がある人は、感染歴がない人に比べてスコアが低かった。CTVニュースによれば、感染歴のある人は、論理的思考、問題解決、空間計画や目標検出などの検査で、感染歴がない人よりスコアが悪かった。

感染歴がある人の中でも、より重篤な症状を経験した人の結果が悪い。たとえば人工呼吸器を使用していた人は、認知機能の最も大幅な低下を記録し、IQ(知能指数)で言えば7ポイントの低下に匹敵したという。

頭がぼうっとする「ブレインフォグ」

「これらの結果は、長期コロナ感染症に関する各種報告で指摘されていることと一致している。長期コロナ感染症では『ブレインフォグ(脳に霧がかかったように頭がぼうっとする』や集中力の低下、的確な言葉を見つけるのが難しいなどの問題が多いとされている」と研究チームは報告書で指摘し、さらにこう続けた。「新型コロナウイルス感染症の感染歴は、特に高次の認知機能や実行機能の問題と関連がする可能性がある」

研究者たちはまた、こうした認知障害は、新型コロナウイルスのそのほかの症状がなくなった後も長期にわたって続く可能性があるとも指摘。最初に感染してから、数週間、あるいは何カ月も続く場合もあると述べた。しかしながら、新型コロナウイルス感染症が知能に影響を及ぼす神経生物学的な変化や心理的な変化について適切な判断を下すためには、脳の画像検査データを含むさらなるデータの研究が必要だとも説明した。

今回の研究には、インペリアル・カレッジ・ロンドン、ロンドン大学キングズ・カレッジ、ケンブリッジ大学、サウスハンプトン大学とシカゴ大学の研究者たちが参加した。

新型コロナウイルス感染症は、症状が長期化する可能性があることが分かっている。メイヨー・クリニックによれば、それらの症状には倦怠感や関節痛、頭痛、臭覚や味覚の喪失、発熱や立ちくらみが含まれる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中