最新記事

中国軍事

「世界記録並み」の急ピッチで強襲揚陸艦の建造を進める中国

China Rapidly Developing Amphibious Assault Ships to Dominate Seas

2020年12月24日(木)14時17分
ジョン・フェン

上海から東シナ海に向けて出航するのが確認された075型強襲揚陸艦 Weibo

<今年8月に試験航海に出た1番艦に続き、今週は2番艦が東シナ海に向けて出航。8隻を発注し、「餃子をつくるような」速さで建造中と地元紙>

現地メディアの報道によれば、中国は「世界記録並みの」急ピッチで強襲揚陸艦の建造を進めており、12月22日には人民解放軍の揚陸艦の2隻目が試験航海を開始した。

22日、4月に進水したばかりの中国海軍の075型強襲揚陸艦が上海の滬東造船所から東シナ海に向けて出航した様子が撮影された。

中国メディアは、排水量約4万トンの同揚陸艦について、「台湾海峡や南シナ海での軍事衝突で優位に立つ」という中国政府の念願実現の鍵を握る存在だと強調している。これらの海域では今年に入り、中国海軍と米海軍の睨み合いが頻発している。

人民解放軍は075型強襲揚陸艦を計8隻発注している。現在3隻目が建造中で、2021年の前半には同軍に引き渡される見通しだ。

075型の1隻目は、進水式からわずか10カ月後の2020年8月に初の試験航海をした。中国軍南海艦隊に組み込まれ、最近実施された実弾発射を伴う軍事演習にも参加した。

2隻目は完成から8カ月で試験航海を開始しており、上海のニュースサイト「東方網」はこれについて、中国が「世界記録並み」のペースで艦船の建造を進めていることを示していると指摘。中国はまるで「餃子をつくるような」ペースで艦船を進水させていると表現した。

今後さらに戦闘機搭載の可能性も

2019年の複数の報道によれば、075型強襲揚陸艦は、最大30機の攻撃ヘリコプターと最大900人の部隊の収容可能。2020年には複数のアナリストが、中国軍は今後075型に戦闘機も搭載する必要があり、フル稼働できるようになるのは2030年頃かもしれないと指摘した。

米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は11月に発表した報告書の中で、中国軍が075型強襲揚陸艦のウェルドック(注水可能なドック型格納庫)から上陸用装軌車を発進させることも考えられると述べている。

中国共産党機関紙人民日報系のタブロイド紙「環球時報」は、075型強襲揚陸艦が就役すれば、中国はたとえば台湾や南シナ海などの島や岩礁での軍事作戦において「垂直展開」を実施することが可能になると指摘。またCSISは前述の報告書で、075型は災害救助や人道支援にも活用されるだろうと予測した。

12月15日には、台湾が初めて自主建造したステルス哨戒艦「塔江」を公開。2025年までに11隻を建造予定だと明らかにした。安全保障の専門家たちは、「空母キラー」の異名を取るこの哨戒艦は、中国海軍が台湾に侵攻してきた際に形勢を逆転させる助けになり得ると示唆した。

だが環球時報は、台湾の新たなステルス哨戒艦が、圧倒的規模を誇る中国海軍に脅威をもたらすことはないと否定。「塔江」は(075型にも搭載されている)中国軍のZ9型ヘリコプター1機で沈没させられると一蹴した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:日銀オペ減額、早期正常化の思惑増幅 長期

ビジネス

ソニーGの今期、5.5%の営業増益見通し PS5販

ビジネス

英労働市場、歴史的基準で依然タイト=中銀ピル氏

ビジネス

英賃金、1─3月は予想上回る6.0%上昇 割れる市
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 5

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 6

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 7

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    「人の臓器を揚げて食らう」人肉食受刑者らによる最…

  • 10

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中