最新記事

中国

父・習仲勲の執念 深セン経済特区40周年記念に習近平出席

2020年10月17日(土)20時13分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

中国・深セン経済特区設置から40年 巨大スクリーンに映し出された習近平国家主席 Carlos Garcia Rawlins-REUTERS

10月14日、習近平は自分の父・習仲勲が提案し建設した深セン経済特区設立40周年記念式典に出席した。総書記就任後、最初に視察したのも深センで、グレーターベイエリア構想とデジタル人民元に力を入れている。

深セン経済特区構想は習仲勲が提案し中央に決議させた

今では「中国のシリコンバレー」と呼ばれるほどハイテク企業が集中している深センを、「経済特区」として認めさせたのは習近平の父・習仲勲だ。

1962年に小説『劉志丹』を書かせて反党活動を行ったという冤罪で国務院副総理の座からいきなり罪人にされ、1978年まで捕らわれの身であった習仲勲は、習近平やその母親・斉心などの奔走により、ようやく釈放された。

釈放に尽力したのは、当時の中共中央組織部部長・胡耀邦と、全人代常務委員会委員長・葉剣英である。

1978年2月24日から人民大会堂で開催された第五回政治協商会議全国委員会第1次会議に出席し、全国政治協商会議常務委員会委員に選ばれるところから再出発が始まった。4月5日に第二書記として広東省に派遣された。

その頃の深センはカエルが鳴いているようなあぜ道があるだけで、それも農民あるいは漁民の多くは隣接する香港に非合法的に逃亡する者が多く、農地は荒れ果てていた。逃亡者が減らない原因は、深センが貧乏だからだ。夜ともなると、橋一つ隔てた向こうには、香港の高層ビルとネオンサインが輝いていた。

そこで習仲勲は何としても深センを豊かにしようと血みどろの努力をするのである。

文化大革命(文革)は1979年10月に終わったばかりで、庶民に商売をさせようとすると文革のスローガンの一つだった「走資派(資本主義に走る者)」という批判が来る。それでも逃亡者を防ぐためには経済を繁栄させるしかない。当時の習仲勲の努力は「殺出一条血路」(命懸けで闘って血路を開く)という言葉で表されている。

習仲勲等は1930年代、陝西・甘粛・寧夏などの一帯で「陝甘寧革命特区」という革命根拠地を創っていた。

そこで習仲勲は深センなど、いくつかの広東省の都市を「経済特区」と位置づけ、「特別の経済交易に関する権限を広東に欲しい」と中央に要求し、「深セン経済特区」が誕生するに至ったのである。

1979年4月に「輸出特区」として、1980年8月には「経済特区」として正式批准が国務院から下りたが、改革開放の号令がかかる1978年12月よりも前から、習仲勲は切羽詰まった形で、改革開放を先行する行動を実際に取っていたことになる。改革開放の先駆者は習仲勲であり、「経済特区」のアイディアは習仲勲が出したものである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、金利見通しを巡り 円は3日

ビジネス

米国株式市場=ダウ6連騰、支援的な金融政策に期待

ビジネス

EXCLUSIVE-米検察、テスラを詐欺の疑いで調

ビジネス

米家計・銀行・企業の財務状況は概ね良好=クックFR
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    習近平が5年ぶり欧州訪問も「地政学的な緊張」は増すばかり

  • 4

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 7

    迫り来る「巨大竜巻」から逃げる家族が奇跡的に救出…

  • 8

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中