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新型コロナに水銀汚染 アマゾン「ゴールドラッシュ」で不法採掘者が急増

2020年7月4日(土)13時31分

金はインドへ

政府データによると、ブラジル北部のロライマ州は、金が最も重要な輸出品だ。しかし同州で法律にのっとり登録された探鉱事業は存在しない。

政府の鉱業機関筋によると、同州の金採掘はほぼすべて、ヤノマミ族など先住民の土地で行われている。つまり非合法だ。

採掘された金は、大半がインドに輸出される。公式統計によると、昨年はロライマ州からインドへの輸出量が486キロと、18年の38キロから増えた。

非合法の採掘を合法化したいと公言するボルソナロ大統領が就任すると、非合法の金採掘者らは意を強くした。ボルソナロ氏は、ヤノマミ族の特別区域は人口に対して大き過ぎるとも述べている。

採掘者とコロナは出て行け

環境保護団体グリーンピースは今週、独自の衛星データ分析に基づき、アマゾンでの非合法採掘の72%は先住民の土地か特別区域で行われていると指摘した。

20年に及ぶ土地所有権闘争の末に1992年に公式に居留地域が認められたヤノマミ族は「採掘者は出て行け、COVID(新型コロナ)は出て行け」の合言葉を掲げ、採掘者の排除を求める嘆願を開始した。

救いの手が差し伸べられるかもしれない。連邦裁判所は17日、FUNAIに対し、新型コロナの感染爆発との闘いを支援し、非合法採掘を止めるため、ヤノマミ族の特別区域に出先機関を3カ所再設置するようよう命じた。こうした出先機関の常設は、ウイルスに接触していないヤノマミ族をモニターする上でとりわけ重要だ。

先住民の権利保護を求める団体サバイバル・インターナショナルの責任者でヤノマミ族と一緒に30年活動してきたフィオナ・ワトソン氏は「現在、ヤノマミ族は極めて被害を受けやすい状態だが、彼ら、彼女らは粘り強い人々でもある。彼らは決して、ただ傍観し安穏としていることはできない。常に誰かしらが彼らの土地に入り込もうとしているからだ」と話した。


Simon Scarr Anthony Boadle

[ロイター]


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