最新記事

ウイルス

新型コロナウイルスの「0号患者」を探せ!

Scientists are still searching for the source of COVID-19: why it matters

2020年3月17日(火)19時05分
ワンダ・マーコッター(南ア・プレトリア大学動物原性感染症センター所長)

世界中の専門家が答えを探し求めている China Daily via REUTERS

<ウイルスの宿主を突き止めてヒトへの感染のメカニズムを解明できれば劇的に損失を減らし多くの命を救うことができる>

今や世界中に感染が拡大している「新型コロナウイルス(SARS CoV-2)」。最初にヒトへの感染が報告されたのは2019年の12月で、中国・湖北省の武漢市で41人が原因不明の肺炎を発症し、その後の分析で、原因が新型コロナウイルスだということが明らかになった。

41人の患者のうち3分の2が、華南の生鮮市場(魚介類をはじめ野生生物、ヘビ、鳥や数種類の動物の肉や死骸を販売)に接触していたことが確認された。市場は即座に閉鎖され、いまだに再開していない。

以降、世界中の科学者たちが新型コロナウイルスの正体を突き止めようと、研究を続けている。

最初の手がかりが明らかにされたのは、2020年1月。中国当局が、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の患者から採取した検体を分析し、新型コロナウイルスのゲノム配列情報を公開したのだ。これにより、新型コロナウイルスは03年にSARS(重症急性呼吸器症候群)の大流行を引き起こしたSARSコロナウイルス(SARS-CoV)と同じグループに属することが分かった。

「0号患者」の感染源は

だが今回のウイルスとSARSコロナウイルスには大きな違いがあるため、その起源は何かという疑問が浮上している。最初の感染者の3分の2が華南の市場に接触していたことから、この市場となんらかの関係があるのではないかという説が最も有力だが、いまだにその証拠はない。しかもその後の調査で、報告された最初の患者(19年12月1日に症状が出始めた)と市場やそのほかの患者との間につながりが確認されなかったことが分かっている。

新型コロナウイルスをめぐる問題の中でも最も重要な問題は、ウイルスの発生源が何かについてのはっきりしたデータがないことだ。だが本当の最初の感染者である「0号患者(初発症例)」の感染源が何かを突き止めることは、とても重要だ。今回のウイルスのパンデミック(世界的な大流行)につながった人間の行動や活動を含む「特定の状況」を理解することで、将来のウイルス流行のリスク要因に関するヒントが得られる可能性があるからだ。

今回のウイルスの発生源については、最初の感染例が報告された直後から、さまざまな憶測が飛び交っている。その中には、ウイルスは武漢市疾病対策予防センターの研究所から流出したとする説もあった。これを受けて複数の著名な科学者が共同で声明を発表し、この「陰謀説」は事実ではないと非難した。同様に、ウイルスの発生源がヘビだとする説も否定された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 7

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 8

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中