最新記事

アメリカ社会

人気の大統領だったのにオバマの命名運動が振るわない理由

THE PRESIDENTIAL NAMING GAME

2020年3月4日(水)18時10分
スティーブ・フリース(ジャーナリスト)

magw200304_NamingGame2.jpg

レーガンの記念図書館の開館式典には歴代大統領が出席 DAVID HUME KENNERLY/GETTY IMAGES

命名運動は大統領のレガシーを確固たるものにするために重要だと、専門家は言う。1998年にワシントン・ナショナル空港がレーガンにちなんで改称されたという事実は、第40代大統領が偉人として公的に承認されたことを意味する。「レーガンの支持者がレガシーの確立に力を入れた結果、未来の人々の見方に影響を与えている」と、政治的ブランド構築についての著作が多数あるステットソン大学(フロリダ州)のシアラ・スペリスキー教授(法学)は指摘する。

ノークイストも同意見だ。「子供たちが親に向かって『どうしてレーガン空港なの?』と年に10万回尋ねれば、そこから会話が生まれ、学びの機会になる」

ニュースサイト「ポリティコ」の共同創設者ジョン・ハリスも、右派がレーガンの神格化に成功したのとは対照的に、左派はオバマの業績をアピールすることに失敗したと論じている。「ある世代の保守派は歴史が権力強化に役立つことを認識し、レーガンの業績をたたえ、命名運動に多大な労力を注ぎ込んだ」

それに比べて民主党は後世に語り継がれるオバマ伝説をつくる努力を放棄していると、ハリスは指摘する。

実際、ノークイストの精力的な運動は現代ではほかに例を見ない。ビル・クリントンの名を冠した最も重要な建物はワシントンの米環境保護局本部。「ビル・クリントン通り」はアメリカでは彼の生誕地アーカンソー州にあるだけだ。ただしコソボにも1カ所、この名の通りがある(独立支援に感謝して命名された)。

ブッシュ父の名を冠した重要な建物にはCIA本部ビルやヒューストンの空港などがあり、息子の名を冠した小学校はカリフォルニアやテキサス州にある。

レーガンの名を冠する運動も1990年以降はやや下火になり、ラスベガス近郊の山をレーガン山とする運動は民主党の反対で頓挫した。それでも引き続き成果は上がっている。2016年にはカンザス州ウィチタの内国歳入庁(IRS)支部の建物にレーガンの名が付いたし、昨年11月にはベルリンの壁崩壊30周年を記念して、在ベルリン米大使館にレーガン像が設置された。フロリダ州だけでもレーガン通りが6本もある。

さらに毎年2月6日のレーガンの誕生日が近づくと、ATRのレガシープロジェクトは全米の州知事にこの日を「レーガンの日」とする旨の公告を行うよう手紙を送る。手紙には各州の実情に合わせた公告文のひな型まで添えてあり、「今年も40州くらいが応じてくれるだろう」と、ノークイストは事前に話していた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、金利見通しを巡り 円は3日

ビジネス

米国株式市場=ダウ6連騰、支援的な金融政策に期待

ビジネス

EXCLUSIVE-米検察、テスラを詐欺の疑いで調

ビジネス

米家計・銀行・企業の財務状況は概ね良好=クックFR
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    習近平が5年ぶり欧州訪問も「地政学的な緊張」は増すばかり

  • 4

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 7

    迫り来る「巨大竜巻」から逃げる家族が奇跡的に救出…

  • 8

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中