最新記事

テロ

テロの犠牲者減少、しかし極右による攻撃は増加傾向に:世界テロリズム指数2019

2019年11月29日(金)15時50分
松丸さとみ

テロによる死亡者数はピークの2014年と比べ52%減となったが...... @GlobPeaceIndex - Twitter

<最新の調査によると、テロによる死亡者数は世界全体で4年連続で減少したが、極右思想の個人による攻撃の増加が懸念......>

イスラム国やボコ・ハラム弱体化によりテロ数減少

最新の調査により、テロによる死亡者数が、世界全体で見ると4年連続で減少したことが明らかになった。2018年にテロにより死亡した人の数は、ピーク時の2014年と比べ、52%減となる。オーストラリアに拠点を置くシンクタンク経済平和研究所(IEP)が世界テロリズム指数2019年版をこのほど発表した。


2018年の死亡者数は1万5952人で、前年比15.2%の減少だった。世界テロリズム指数の報告書は、死亡者数の減少が、イラク・レバントのイスラム国(いわゆるイスラム国)とボコ・ハラムに対する軍事的制圧の成功と呼応していると指摘している。

イスラム国によるテロの犠牲者は2年連続での減少となった。世界でイスラム国のテロで死亡した人の数は、2017年には4350人だったが、2018年は1328人となり、この1年で69%減少した。攻撃そのものも63%減となった。イラクおよびシリアには、イスラム国の戦闘員が2014年の時点で7万人いたとされているが、現在は1万8000人にまで減ったとみられている。

イスラム国は、2014年から2017年の間、最も犠牲者を出したテロ組織だったが、イスラム国に代わり、2018年に世界で最も死亡者を出したテロ組織はタリバンとなった。同組織による死亡者数は71%弱増加し、6103人に達した。

テロ犠牲者最多の国はアフガニスタン

テロによる死亡者数の減少が最も大きかった国はイラクで、2018年は前年比で3217人減少し、75%減。2003年以来初めて、イラクはテロの影響が世界最多の国でなくなったことになる。

イラクに代わり世界で最もテロによる死亡者数が多い国は、アフガニスタンとなった。テロによる死亡者数は2018年、7379人となり59%増加した。この増加は、内戦の激化と一致しているという。アフガニスタンではこの10年で内戦とテロによる死亡者数が着実に増えており、同国でのテロによる死亡者数は2008年と比較すると631%増加している。

テロによる死亡者数が前年比で増加したのは、アフガニスタンの他、ナイジェリア、マリ、モザンビークのみだった。

世界的にはテロによる死亡者数は減少したが、テロが発生した国の数でみると、2018年にはテロが1件以上発生した国の数は103カ国に上り、犠牲者が1人以上出た国は71カ国に上った。1人以上の犠牲者が出た国の数はこれまでで2番目に多い年となった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

西側諸国、イスラエルに書簡 ガザでの国際法順守求め

ワールド

プーチン氏「ハリコフ制圧は計画にない」、軍事作戦は

ワールド

中国、総合的な不動産対策発表 地方政府が住宅購入・

ワールド

ロ中、ガス輸送管「シベリアの力2」で近い将来に契約
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 7

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    日鉄のUSスチール買収、米が承認の可能性「ゼロ」─…

  • 10

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中