最新記事

ロシア

プーチン肝いり、カムチャッカに巨大リゾート誕生? 「頼みの綱」は中国資金

2019年11月1日(金)17時50分
松丸さとみ

カムチャッカ半島は今後開発が進む?...... france24-YouTube

<ウラジオストクで「東方経済フォーラム」が開催され、カムチャッカでの観光開発が計画されるなど、ロシアは極東地域の開発に力を入れつつある......>

国土41%を占める広さに人口わずか6%

広大なロシアの中で最も東に位置する極東連邦管区は、国土の約41%を占めるが、人口はわずか全国の6%にしか過ぎない。しかしプーチン大統領は、2022年までに47億ルーブル(約80億円)を投じてこの地域を開発する計画を立てている。フランスのニュースサイト「フランス24」が報じた。

モスクワやサンクトペテルブルクなど大都市が西側に集中しているロシアにとって、他の都市から孤立している極東地域はこれまで、ほとんど手付かずの状態だった。10月22日付の英インディペンデント紙によると、極東連邦管区の中でも最も東側に位置するカムチャッカ地方には現在、舗装された道路がわずか600キロ弱しかない。そのほとんどが半島南部の3都市にあるものであり、極東連邦管区の人口の80%もこれらの都市に集中している。

汎アジアのビジネス・コンサルティング会社デザン・シラがロシアのビジネス・ニュースを発信するサイト「ロシア・ブリーフィング・ニュース」は今年9月、プーチン大統領の発言を引用する形で、極東地域からの若い世代の流出が著しいと伝えた。若い人たちは、他の土地でのチャンスを求めてこの地域を後にしているのだという。フランス24も、年間1万7000人のスピードで人口が減少していると報じている。

極東地域に6兆円弱の投資契約

しかしプーチン大統領は、この現状を変える計画を立てている。極東連邦管区に47億ルーブルを投じて、道路や橋などを整備し、電力網を構築し、温泉施設を整えるというのだ。ロシアに温泉?と驚いてしまうが、極東連邦管区の中でも最も東のカムチャッカ半島には火山群があり、ユネスコの世界遺産にも登録されている。温泉が湧くのも不思議はなく、現在でもいくつもの温泉施設があり、人気の観光資源になっているようだ。

9月にはウラジオストクで、極東連邦管区に海外からの民間投資を呼び込むことが目的の国際会議「 東方経済フォーラム」が開催された。ここでの成果は過去最大となり、中国メディア財新のグローバル版によると、公表されている分だけでも3.4兆ルーブル(約5.7兆円)に上る270件の契約が締結されたという。

契約内容を見ると、化学工場や工業団地、油田やガスなどの探査といった設備の建設や、大学の設立などが含まれ、実にさまざまだ。こうした新たな施設は極東地域での経済を活性化し、雇用を生むことになる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動

ビジネス

必要なら利上げも、インフレは今年改善なく=ボウマン

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中