最新記事

ブレグジッド

「ミルクシェイクぶっかけ」で右派政治家に抗議──イギリス

British Make ‘Milkshaking’ the Far-Right a Thing

2019年5月22日(水)20時00分
シェーン・クロウチャー

路上でミルクシェイクをかけられたナイジェル・ファラージ。ブレグジット党の選挙集会のためにニューカッスルを訪れていた。(19年5月20日) Scott Heppell- REUTERS

<混迷するブレグジットと間近に迫る欧州議会選挙でヒートアップ>

ブレグジットか否かで混迷を深めるイギリスでは、5月23日から投票が始まる欧州議会選挙を前に、右翼の政治家や活動家にミルクシェイクをかける抗議行動が頻発している。

今年1月にEU離脱を党是に掲げる「ブレグジット党」を旗揚げし、今や支持率トップを走るポピュリスト政治家、ナイジェル・ファラージも被害者の1人。英北東部ニューカッスルの町で遊説していた20日に、ミルクシェイクの洗礼を浴びた。

それ以前には、右翼政党「イギリス独立党(UKIP)」のカール・ベンジャミン候補と、詐欺で有罪判決を受けた極右候補スティーブン・ヤクスリーレノン(別名トミー・ロビンソン)も被害に遭っている。

<英政界の勢力図を知る>【欧州議会選】英国の2大政党は大敗か?──新党「ブレグジット党」は10万人の支持獲得

多くの人がこの騒動で留飲を下げ、面白いと喜ぶ一方で、政治的な暴力を是認し、笑って済ませる風潮は、危険な先例になりうると危惧する声もある。

ファラージにミルクシェイクをかけたポール・クロウサー(32)は警察に暴行容疑で逮捕された。

抗議する権利を行使した

クロウサーによれば、ぶちまけたのは近くのレストランで買ったキャラメルミルクシェイク。飲むのを楽しみしていたが、もっと有意義なことに使った、と彼は語った。

「ファラージが町に来ているとは知らなかったが、今しかチャンスはないと思った。ファラージのような連中に抗議する権利を行使しただけだ。彼がまきちらす悪意や人種差別感情がもたらす害に比べたら、ミルクシェイクがかかることなど大したことではない」

ファラージは事件を防げなかった警備担当者を叱りつけたという。その後彼は、イギリスのEU残留を支持する人々に対する批判をツイッターに投稿した。

「残念なことに、一部のEU残留派が過激化して、まともな選挙運動ができなくなっている。理性的で品位ある民主主義が機能するためには、敗者が敗北を認める必要がある。こんなことが起きるのは、(EU離脱を支持した)国民投票の結果を受け入れない政治家たちのせいだ」

ソーシャルメディアにはミルクシェイクをぶちまける様子を映したさまざまな動画が出回っており、模倣事件も起きている。

スコットランドのエジンバラでは、警察が地元のマクドナルドにミルクシェイクの販売を自粛するよう要請した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豪BHP、英アングロ買収案の引き上げ必要=JPモル

ワールド

サウジ皇太子が訪日を延期、国王の健康状態受け=林官

ビジネス

午前の国債先物は続落、長期金利は11年ぶり高水準の

ビジネス

中国、最優遇貸出金利据え置き 市場予想通り
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 7

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 8

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 9

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中