最新記事

動物

米空港の安全を守るワンコ、垂れ耳が求められるワケとは

2019年1月11日(金)17時30分
松丸さとみ

とはいえ、TSAの主張には科学的な根拠があるらしい。

1959年に当時ソビエト連邦だったロシアのシベリアで、生物学者のドミトリ・ベリャーエフ博士が開始し、現在も継続されている研究がある。野生のギンギツネ(キツネはイヌ科に属する)から、「落ち着いた性格で人懐こい」という特徴を持った個体だけを選んで繁殖し続けるというものだ。5世代目くらいになるとギンギツネの家畜化が進み、犬のように尻尾を振ったり人の手を舐めるという行動を取るようになった。さらに、10世代目くらいになると今度は耳が垂れてきたという。

この研究に関して書籍『How to Tame a Fox (and Build a Dog)』(キツネを手なずけ犬にする方法)(シカゴ大学出版)を書いた米ルイビル大学の進化生物学者リー・ダガトキン博士はニューヨーク・タイムズに対し、性格がもの静かで人懐こい動物は、軟骨などの細胞を生育させる幹細胞の一種、神経堤細胞が少ないことが分かったと説明した。これが耳に現れると、軟骨が少ないために耳が立ち上がらなくなるのだという。

ただし、TSA側は、立ち耳の犬を今後一切採用しない、というわけではないと説明する。TSAが犬を採用する際に注目する点は、健康、異臭を察知する能力、そして社交性の3点で、耳の形状よりもこうした特徴が優先されるという。TSAの広報担当者はワシントン・イグザミナーに対し、耳の形状を考慮するというのはあくまでも非公式な決定で、正式な書類があるわけではない、と説明している。

View this post on Instagram

Wake up Maggie! We think we've got something to say to you! It's almost September, and you really shouldn't just sit there and drool. Just kidding! Maggie is a hard working doggo, and she deserves some rest every now and then. She's an explosives detection canine and she works with her handler at the Washington Dulles International Airport (IAD). ... TSA trains and deploys about 350 TSA-led and local law enforcement-led canine teams per year to operate in the aviation, multimodal, mass transit, and cargo environments. Once trained, these very effective, mobile teams can quickly locate and identify dangerous materials that may present a threat to transportation systems. The canines are often seen working in some of the nation's largest airports. TSA has been training canines in explosives detection since 2001. ... #TSACanines #WorkingDogs #DogsOfInstagram #TSA #IAD

TSAさん(@tsa)がシェアした投稿 -

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動

ビジネス

必要なら利上げも、インフレは今年改善なく=ボウマン

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中