最新記事

韓国

北朝鮮への対応巡り韓国・文政権内に亀裂? 非核化交渉の妨げに

2018年12月11日(火)18時07分

募るいら立ち

韓国大統領府の考え方をよく知る第3の情報提供者によれば、趙統一担当相があまりにも米国の思惑を気にすることへの懸念から、大統領府、あるいは統一省内部でさえ、趙氏へのいら立ちが強まっているという。

「統一担当相としての趙氏に大統領が期待しているのは、大統領が重視するイニシアチブが実現するような大胆なアイデアを思いつくことだ」とこの情報提供者は言う。

この夏に3回行われた南北首脳会談の中で、文大統領と金正恩氏は、両国をつなぐ鉄道・道路の再開、条件が整った時点での開城工業団地の操業再開、長年中断している北朝鮮のリゾート地、金剛山へのツアー再開に合意した。

これらの計画はいずれも大きな進捗(しんちょく)を見せていない。制裁によって直接的に禁止されているか、開城工業団地の場合のように、こうした南北合同プロジェクトが制裁の効果を損なうことを危ぶむ米当局者を韓国政府が説得するのに時間がかかっているためだ。

また北朝鮮自体も、行動が読みにくいパートナーだ。統一省の当局者によれば、開城の連絡事務所を通じた協議もたまにしか行われていない。北朝鮮政府側の交渉担当者が毎週予定されている協議に無断欠席することが多いからだ。

それでも、開城での連絡事務所開設は米国政府との対立を招いた。

韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相は8月、議会答弁の中で、米当局者が韓国政府に対し、開城の連絡事務所に関する韓国側の説明は「十分ではない」と伝えてきたと述べた。

ソウルにいるある外交関係者によれば、現在は閉鎖されている開城工業団地でかつて工場を経営していた企業関係者グループが連絡事務所の開所式に招待されたことは、米国政府にとって予想外だったという。

韓米両国は先月、対北朝鮮政策を調整するため、核交渉の代表団を中心としたワーキンググループを立ち上げた。上記の外交関係者によれば、このグループ立ち上げは「南北朝鮮の関係をけん制したい」という米国の要望から生まれたという。

開城の連絡事務所に関する質問に対して、米国務省のある当局者は「すべての加盟国が、国連安保理決議に基づく部門ごとの禁止物品を含め、国連による制裁を完全に実施することを期待している。また、(北朝鮮による)違法な核兵器・ミサイル開発プログラムを終結させるべく、すべての国が真剣に責任を果たすことを期待している」と述べている。

また、別の国務省当局者によれば、米国は、トランプ・金両氏による首脳会談において、4月の南北首脳会談での合意に対して承認を表明したという。「南北関係の進展は、非核化の進捗と足並みをそろえて行われなければならない」というのがその理由だ。

ポンペオ米国務長官は先月、ワシントンで趙統一担当相に会い、南北間の協力と核交渉の進捗は「引き続き足並みをそろえるべきである」とはっきりと警告した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦力増強を指示 戦術誘導弾の実

ビジネス

アングル:中国の住宅買い換えキャンペーン、中古物件
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 9

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中