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超タカ派のボルトン補佐官 トランプ政権のイラン強硬策旗振り役に

2018年10月15日(月)08時26分

イランへの執着

トランプ大統領に対する働きかけで、ボルトン補佐官が最も成功を収めたものがイラン政策だ。

イランの勢力拡大に対抗するため、ペルシャ湾岸のアラブ6カ国に加え、エジプトやヨルダンと政治や安全保障を巡る同盟関係を築こうとするトランプ政権の取り組みにおいて、中心的な役割を果たしたのがボルトン補佐官だった。

ボルトン氏は、9月末にニューヨークで行った演説でイランに対して「うそやずるで欺き続けるなら、地獄のような報いを受けるだろう」と警告。このような過激な発言は、ブッシュ政権時代の同氏の特徴だったとみられている。

ボルトン氏が軍備管理担当の国務次官を勤めていたころ、パウエル国務長官(当時)の首席補佐官を務めたローレンス・ウィルカーソン氏は、人事や政策を巡り、国務省内でボルトン氏と頻繁に対立した、と明かす。

ボルトン氏が北朝鮮を「張子の虎」と呼んだ2002年の会議を振り返り、ウィルカーソン氏は、戦争になれば、北朝鮮側の大規模な火器攻撃で韓国人や米国人に数万人規模の死者が出る可能性がある、と同会議で警告したという。

「ジョン(ボルトン氏)は私を冷たく見て、自分は戦争はしない、それはあなたの縄張りだ、と言った。私は、(戦争を)始めるだけ始めるんだろう、と返答した。それが、世界のあらゆる問題に対する彼の第一の対処法だ」と、ウィルカーソン氏。同氏は後に、ボルトン氏が支持したイラク戦争に表立って反対している。

一方、ボルトン氏には「米国の国益を守るため、外交や経済、軍事政策を調整する卓越した能力がある」とある政府高官は語り、ウィルカーソン氏の懸念を一蹴した。

国防総省関係者は、ボルトン補佐官について、他省庁との協議において、自分と対立する意見を締め出してしまうと話す。

「反対意見に耳を貸すような仕組みがないし、特にイランに関しては、いずれにしても反対意見は歓迎されない」と、同関係者は言う。「結果として、その分野で何年、何十年と経験を積んできた人々の意見が無視されたり、脅かされている」

ペンス副大統領の首席補佐官ニック・エアーズ氏は、こうしたボルトン氏を巡る指摘に反論する。「彼は、うまくチームで仕事をしている」

ボルトン補佐官は、こうした指摘に反論はしなかったが、同僚との論争を好んで楽しんでいる、とロイターに語った。

「私は法廷論争で鍛えられた。私の人生は議論そのものだ。もし意見が異なる人がいれば、(議論を)待ちきれない」と、同補佐官は笑みを浮かべて言った。

(Steve Holland記者, Jeff Mason記者、Jonathan Landay記者、翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

[ワシントン 4日 ロイター]


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