最新記事

独立運動

独立運動家の逮捕相次ぐインドネシア 「最後の紛争地」パプアめぐり治安当局が厳重警戒

2018年9月18日(火)21時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

「モーニングスター旗」を掲げるパプアの独立運動の支援者たち Muhammad Yamin - REUTERS

<来年4月の大統領選挙を控えたインドネシアでは、パプア州の分離独立を目指す活動家に対する弾圧が強まっている──>

インドネシアの最東端に位置しニューギニア島の西半分を占めるパプア州と西パプア州で学生活動家の逮捕、武器や銃弾などの押収が相次いでいる。いずれもパプアのインドネシアからの独立を求める運動に関連したものとみて国軍や警察は「国家の分裂を招く危険がある」として警戒を強めている。

インドネシアは2019年4月に大統領選、国会議員選を控え社会不安が高まる予兆を見せており、こうした風潮に乗って独立運動が今後さらに激化する可能性も指摘されており、パプア情勢から目が離せなくなっている。

パプア州警察は9月8日、州都ジャヤプラにあるジャヤプラ科学技術大学のキャンパス内で同大の学生34人を治安維持違反の容疑で一斉に逮捕した。キャンパス内の捜索で拡声器や横断幕、パンフレットを押収したが、いずれもパプア民族自決の運動への参加を大学生や一般市民に訴えるものだった。

逮捕時、学生はキャンパスでこうした独立を訴えるパンフを配布しており、同時にソーシャルネットワークを通じて独立運動に関する情報を拡散していたという。

地元警察は外部の関係者がいなかったか、また大学当局の関与の有無などを現在調べている。

大量の弾薬、武器所持で逮捕の学生も

9月10日にはパプア州モーゼス・キアンガン空港からヤフキモ県ドゥカイに空路向かおうとしていた20歳の学生「RW」(警察は名前のイニシャルしか明らかにしていない)を武器不法所持の疑いで逮捕した。

空港にあるセキュリティーチェックのX線検査で荷物に中に銃弾があるのを警備担当者が発見し、詳しく調べたところ銃弾153発と現金1億1000万ルピア(約90万円)が発見され逮捕となった。

RWに対する捜査から警察当局はRWの仲間の存在をつかみ、9月16日早朝、ミミカ県ブンドゥンガンにある鉱山会社フリーポート社敷地内の住宅を軍と協力して急襲、8人を逮捕した。

住宅からは銃弾116発、火炎手榴弾のモトロフカクテル、手製の銃、多数の文書とともにパプア独立運動の象徴でもある「モーニングスター旗」が押収された。同旗はインドネシア国内では掲揚はもちろん所持しているだけで逮捕の対象となるものだ。

8人が逮捕された住居はパプア独立運動の連絡事務所とみられ、8人は独立運動の活動家の可能性が高いと治安当局ではみており、現在取り調べが続いている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トルコ・ギリシャ首脳が会談、ハマス巡る見解は不一致

ワールド

ロシア軍、北東部ハリコフで地上攻勢強化 戦線拡大

ビジネス

中国、大きく反発も 米が計画の関税措置に=イエレン

ビジネス

UBS、クレディS買収後の技術統合に遅延あればリス
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子高齢化、死ぬまで働く中国農村の高齢者たち

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 6

    自宅のリフォーム中、床下でショッキングな発見をし…

  • 7

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 8

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 9

    あの伝説も、その語源も...事実疑わしき知識を得意げ…

  • 10

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中