最新記事

貿易戦争の余波は日本にも クリネックスが世界でティッシュ値上げへ

2018年8月8日(水)08時48分

波及効果

パルプは、ペーパータオルなどの消費者向け製品の主原料というだけでなく、それを材料として作られる梱包材料は、多くの企業が使っている。紙製品の生産出荷コストが増大する中で、消費者は、ティッシュや生理用品など日用品の支出負担が増大するリスクに直面する。

ニールセンのデータを投資運用会社バーンスタインが分析したところ、今年すでに、米国消費者のあいだではこれらの製品に対する支出が増大しているという。

結局のところ、消費者が支払う価格は、幅広い製品の価格バランスを決める小売業者次第となる。そのため、メーカーが転嫁したコストがそのまま価格に反映されるとは限らない。例えば、小売業者はおむつの値上げを防ぐためにペーパータオルの価格を引き上げるかもしれない。

そのため、P&Gは6月、「パルプ調達コストは上昇しているが、自社製品の値上げは回避している」と語っていが、米国の消費者が小売店で「チャーミン」に払う価格は今年に入り上昇している。米国における同製品の平均小売価格は、7月中旬までの1カ月間で6.4%上昇したことが、バーンスタインによるデータ分析によって明らかになった。

同様に、ペーパータオル「バウンティ」の小売価格は約6カ月前から上昇しているが、「パフス」ティッシュの小売価格は今年は下落か横ばいだ。P&Gはニールセンのデータについてコメントしなかった。

「パルプは広く普及している。パルプ価格が変動すると、いわば水まき用ホースのなかをゴルフボールが通るように、業界のコスト構造全体に影響が生じる」。アリックスパートナーズで消費者向け製品担当コンサルタントを務めるデビッド・ガーフィールド氏はそう指摘する。

スウェーデンに本拠を置くエシティの場合、消費者向けティッシュ製品におけるコストの25%をパルプが占めている。柔らかさを出すために再生パルプではなく、バージン・パルプにほとんど頼っているためだ。

同社のパルプ調達コストが前年比で35%も急騰したため、第2四半期には、消費者向けティッシュ部門が想定していた営業利益の半分近くを食いつぶしてしまったという。

「1年前には、パルプ価格上昇はおそらく一時的なものにすぎないとの見方も業界内にあった」とエシティのマグナス・グロス最高経営責任者(CEO)はロイターに語った。「今では誰もそんなことを信じていない」

(翻訳:エァクレーレン)

Richa Naidu and Martinne Geller

[シカゴ/ロンドン 31日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20240521issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月21日号(5月14日発売)は「インドのヒント」特集。[モディ首相独占取材]矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディの言葉にあり

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動

ビジネス

必要なら利上げも、インフレは今年改善なく=ボウマン

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中