最新記事

基礎知識

牛肉はOKだがチーズバーガーはNG ユダヤ教を15の疑問で読み解く

2018年7月6日(金)10時25分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

Q 09. どんな宗派がありますか?

主要な宗派として、超正統派、現代正統派、保守派、改革派、再建派の5宗派がある。各宗派で食事規定の実践や、服装などが異なる。たとえば正統派は食事の規定に厳格であるが、改革派は現代社会に合わせて、食事の自由を認める。その中間には保守派がいる。多様性はユダヤ人が経験してきた葛藤のあらわれでもあるだろう。

Q 10. 食べてはいけないものはありますか?

ユダヤ教にはカシュルートと呼ばれる厳密な食事規定がある。反芻しない、もしくは蹄が完全に分かれていない動物や、肉類と乳製品を一緒に調理したもの、血液などを食すことは禁止されている。牛肉はOK だが、チーズバーガーはNG である。

Q 11. ファッションや髪型に決まりはありますか?

基本的に超正統派を含むユダヤ教徒の男性は、シナゴーグの礼拝では神への敬虔さを表するキッパと呼ばれる小さな帽子を被り、タリートと呼ばれる肩からかけるショールを羽織ることが義務づけられている。

また、安息日や祭日を除いた週日の朝の礼拝では、テフィリンと呼ばれる革製の小箱を左上腕に革紐でしばり、他方を額に結び付ける。タリートやテフィリンは男性が着用するものであり、女性がそれらを身につけるのは禁止されている。

神の啓示の法ハラハーを徹底して守る超正統派の人々は、黒い帽子あるいは毛皮の帽子に、黒い上着およびコートを着用。さらに、ペアーと呼ばれるもみあげを巻き毛にして頬まで長く伸ばす髪型にしている。ペアーはキッパと黒い帽子と同様に、超正統派の男性を特徴づけるものであり、たとえばイエメンでは、かつてユダヤ人と異邦人を区別する指標でもあったとされている。

Q 12. 信者に恋をしましたが私は無宗教です。結婚はできますか?

ユダヤ人の血縁を絶やさないよう、入信が必要になる場合もある。ユダヤ人を「ユダヤ人の母親から生まれた人」というイスラエルの帰還法による定義で捉えると、無宗教の異邦人男性がユダヤ人女性と結婚する場合は入信不要だが、女性の場合は入信が必要。

Q 13. 死ぬと人間はどうなるのですか?

ユダヤ教においては来世の生命についての明確な教理は存在しない。しかし同時に、神は人を生前の行いに応じて裁いた後、「来る世の生命」を与えると説く。メシアの到来とともに地上にその国が打ち立てられる時、死者は現世で復活するという考えもある。

Q 14. 悪魔はいますか?

人間の内面に存在する悪の衝動そのものを悪魔とする。サタンは「非難する敵」を意味するヘブライ語のsatan に由来し、人間の内面に存在する悪の衝動を表すメタファーとして理解されることが多い。タルムードでは人間のすべての罪の原因とされる。

Q 15. 人間はどんな存在ですか? 人間は何のために生きるのですか?

人間は神のパートナー。神のイメージにかたどって創造された存在だ。人生の目的は、現在進行している神の創造の業にパートナーとして参加し、これを完成させ、神に栄光を帰すること。ユダヤ民族はトーラーの戒律を守り実践していくことで、よりよい世界を建設する責務を負う。

(Text:櫻井丈)

【参考記事】ムスリムに恋をしたら結婚できる? 今さら聞けないイスラム教15の疑問

penbreligion-cover180.jpg
Pen BOOKS 知っておきたい、世界の宗教。
 ペン編集部 編
 CCCメディアハウス

20240521issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月21日号(5月14日発売)は「インドのヒント」特集。[モディ首相独占取材]矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディの言葉にあり

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

上海市政府、データ海外移転で迅速化対象リスト作成 

ワールド

ウクライナがクリミア基地攻撃、ロ戦闘機3機を破壊=

ワールド

北朝鮮が短距離弾道ミサイル発射、日本のEEZ内への

ワールド

中国、総合的な不動産対策発表 地方政府が住宅購入
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 7

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    日鉄のUSスチール買収、米が承認の可能性「ゼロ」─…

  • 10

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中