最新記事

韓国事情

板門店以外も人気スポットに:韓国国民の関心高まる軍事境界線

2018年5月16日(水)17時40分
佐々木和義

かつて北とつながっていた京元線廃駅の月井里駅

<南北首脳会談が行われてから、その舞台となった板門店ほか軍事境界線が人気の観光スポットになっている>

軍事境界線に韓国国民の関心が高まっている。
南北首脳会談が開かれた板門店は、毎週火曜日から土曜日に見学ツアーが実施されている。外国人は政府認定ツアーへの参加が一般的で、韓国人は30人以上45人以下の団体で申し込みを行う。

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党委員長)が4月27に軍事境界線の板門店で「歴史的な会談」を行った際、握手から公式会談、記念植樹、徒歩の橋での散策風景などが生中継されると、国民は仕事の手を止めてテレビやネット配信にクギ付けとなった。

会談後は団体や学校などから韓国統一部への板門店見学に関する問い合わせが急増している。

板門店の見学は、警察の身元確認手続きなど申し込みから2ヶ月から3ヶ月先で、申し込みが多いと4ヶ月から5ヶ月先になることもある。会談を機に見学希望者が増え、見学が中断された期間中の申込者も累積していることから、実際に見学できるまでの待ち時間はさらに長くなると統一部は予想する。

見学コースは「自由の家」や「帰らざる橋」など韓国側地域の主要施設を回るが、会談が行われた「平和の家」は含まれていない。

板門店以外も人気の観光スポットに

一般人が見学できる軍事境界線は板門店のほかにもあり、人気の観光スポットとなっている。

京畿道には北朝鮮が韓国に侵攻する目的で掘った第3トンネルと都羅山展望台があり、江原道鉄原にも第2トンネルと展望台、かつて北とつながっていた京元線廃駅の月井里駅などがある。第2トンネルを含む鉄原の見学コースは、ツアー当日、先着順で申し込みを受け付け、仁川市江華島にある平和展望台も事前予約なしで見学ができる。

_IGP6824a.jpg

仁川市江華島の平和展望台

南北軍事境界線を挟む非武装地帯(DMZ)の観光商品を扱っている旅行会社への問い合わせが首脳会談以降は例年の1.5倍に増えるなど、春の観光シーズンを迎えたDMZは連日内外の観光客で賑わっているという。

韓国観光公社と非武装地帯(DMZ)を抱える江原道と京畿道は、観光需要に備えて旅行商品の開発とPRに力を入れはじめている。韓国観光公社は首脳会談の開催が決まった3月末、観光開発チームに「南北観光タスクフォース(TF)」を設置。文化体育観光部などと協議し、政府の決定を速やかに事業に反映させて観光客を呼び込む考えだ。

京畿道は道内と江原道北部の「統一経済特区」指定などに向けた実務推進団を設置する方針で、江原道は2008年に中断された北朝鮮・金剛山観光の再開などを推進する。

南北首脳間の合意が履行に向かって、さらに米朝首脳会談が板門店で開かれることになれば、DMZ観光客は一層増えると関係者は期待する。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

再送-バイデン政権の対中関税引き上げ不十分、拡大す

ワールド

ジョージア議会、「スパイ法案」採択 大統領拒否権も

ビジネス

米ホーム・デポ、売上高が予想以上に減少 高額商品が

ワールド

バイデン大統領、対中関税を大幅引き上げ EVや半導
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プーチンの危険なハルキウ攻勢

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 10

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中